先般、LGBTに対する差別的発言を巡り、首相秘書官が更迭されました。LGBTについては、社会の理解も少しずつ深まってきており、諸外国ではLGBTの権利を認める法律の整備も進んでいますが、日本は世界の中でもLGBTの受容度が低い国とされており、OECD加盟国の中では36か国中25位となっています。日本では、全人口に対して7~9%の割合でLGBT の人が存在しているとされ、30人規模の職場であれば、2〜3人程いることが想定されます。ただ、実際にはカミングアウトしていない人も一定数存在することから、潜在的人数は不明です。ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が謳われる中、企業においては、LGBTの人にとっても働きやすい職場環境を整備することが必要となっています。

1 LGBTとは

「LGBT」は、Lesbian(レズビアン:女性同性愛者)、Gay(ゲイ:男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル:両性愛者)、Trans-gender(トランスジェンダー:生まれた時の生物的な性別と、自分の認識している性別が一致していない人)の頭文字をとった合成語で、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)全般を指す言葉として使われています。

また、最近では、「LGBTQ」「LGBTQIA+」という言葉も聞かれるようになっています。

・Questioning(クエスチョニング:性自認や性的指向を決められない、迷っている)
・Intersex(インターセックス:身体的性において男性と女性の両方の性別を有している)
・Asexual(アセクシャル:どの性にも恋愛感情を抱かない)

「+」は、これらのセクシュアリティ以外にもさまざまなセクシュアリティがあるという意味です。

2 LGBTに関する法律

男女雇用機会均等法に基づくセクハラ指針(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)において、「職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものである。また、被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となる」と定められています。

また、2020年6月1日(中小企業は2021年4月1日)からは、改正労働施策総合推進法に基づくパワーハラスメント防止措置が事業主の義務となっていますが、パワーハラスメント防止指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)では、相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む人格を否定するような言動を行うことは、精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)として、また、労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露することは、個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)として、パワーハラスメントに該当すると考えられる例として明記されています。

そして、厚生労働省が公表している「職場におけるパワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!」では、相手の性的指向・性自認(SOGI:Sexual Orientation and Gender Identity)に関する侮辱的な言動や性的指向・性自認に関する望まぬ暴露(アウティング)がパワーハラスメントに該当する場合や、「ホモ」「オカマ」「レズ」などを含む言動は、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントの背景になりうることが示されています。

職場のハラスメントを防止するためにも、SOGIやアウティングに関する知識を周知することが必要であり、少なくとも人事部門やマネジメント層、ハラスメント相談窓口担当者は、これらについて正しく理解しておく必要があります。