地区防災計画制度が2014年4月1日に施行されました。地域居住者と事業者が、自発的に防災活動に関する計画を定められる制度ですが、これまでの自主防災組織が作る計画と何が違うのでしょうか。また、どんな効果が期待されるのでしょうか。


地区防災計画は、行政区域に関わりなく、集落や商店街、自治会など地区単位で居住者や事業者が自発的に防災活動に関する計画を定めるというものです。似たような計画に、自主防災組織がつくる「自主防災計画」というものがありますが、大きな違いは、地区防災計画は、行政が作成する地域防災計画の中に規定されることで確実な実施が期待できる点です。

自主防災計画は、少子高齢化等の社会の変化もあり、実際に活動を行うメンバーの固定化、防災訓練ほか活動内容のマンネリ化などで活動の形骸化が進んでいる場合もあります。地区防災計画制度では、自主防災組織に限らず地区の特性に応じてさまざまな単位で計画を作成することができ、市町村の地域防災計画の中に規定された段階で、行政と地区居住者等双方が、その達成に責任を持つことになります。 

従来、日本の防災計画は、国レベルの総合的かつ長期的な計画である防災基本計画と、地方レベルの都道府県、市町村の地域防災計画があり、それぞれのレベルで防災活動が実施されてきましたが(図1参照)東日本大震災において、「自助、共助、公助」がかみあわないと大規模広域災害において対策がうまく働かないことが強く認識されました。つまり、市町村の行政機能が麻痺するような大規模広域災害が発生した場合には、まずは自分自身で自分の命と身の安全を守ることが重要であり、その上で、地域コミュニティの相互の助け合いが重要になってくることが改めて浮き彫りになったわけです。この教訓を踏まえ、2013年に行われた災害対策基本法の改正では、自助、共助に関する規定が追加され、地区単位の居住者と事業者が行う自発的な防災活動に関する地区防災計画制度が新たに創設されました(図2参照)。

内閣府が公表している地区防災計画ガイドラインでは、地区防災計画の作成・運用にあたって、「全体像の把握」「課題を抽出」「対策の検討」「防災計画の策定と、実践による見直し」などを求めています。まず、地区防災計画の全体像を把握し、各地区の特性に応じて気になる場所や地区の課題に対応する事項を確認。地域コミュニティの課題と対策について検討し、防災計画を作成するとともに、計画に沿った活動の実践を通じた人材育成と、活動継続に向けた計画の見直しが必要としています。また、ガイドラインを効果的に活用するには、できるだけ早い段階から行政関係者、学識経験者などの専門家のアドバイスを求めることが有効としています(図3参照)。