■「なぜなぜ分析」って何だ?
ある時、近くの店で昼食を済ませたハルトたちが会社に戻ってみると、少し離れた席に後輩のQ君がしょんぼりと一人で座っているのが目に入りました。そしてハルトを見るなり「先輩、ちょっと教えてください」と駆け寄ってきたのです。
「どうした? 情けない顔をして」と問いかけると、Q君は次のようなことを話しました。彼はこの半月の間に2度、まったく同じ業務ミスをし、上司から叱られたのです。「何度失敗したらわかるんだ。2度とこんなことのないように、なぜなぜ分析でもやって再発防止策のレポートを提出したまえ!」と。
Q君は肩を落としつつ話を続けます。「さすがの僕も落ち込んでしまいました…。それにしても、再発防止のためにやれと言われたなぜなぜ分析って、いったい何ですか?」
このときセミナーで学んだ記憶がフラッシュバックしたハルトは、ちょっと得意顔で言いました。
「根本的な原因を探るための分析方法だよ。目下の問題について、"なぜ?"を繰り返し問うことによってその原因を掘り下げ、根本原因に到達する方法なんだ。手順はとくにむずかしくはないけど、ちょっと注意しなければいけないことや、分析を進めるためのコツみたいなものもある。まだ休憩時間が残っているから、もう少し詳しく説明しようか」
ハルトは近くにあったホワイトボードを引き寄せ、Q君になぜなぜ分析について簡単なレクチャーを始めました。
■分析の手順とコツ
ハルトがセミナーで学んだことを思い出しながらQ君に説明した内容は次のようなことでした。まず、この分析は複数のメンバーで行うものであること。問題を抱える本人が一人で行うと主観的な判断にかたよってしまう可能性があるというのがその理由。問題を抱える本人だけでなく、その問題を共有する複数の人が集まって行うのが望ましいのです。
次に、問題を明確にすること。これから取り組む問題を紙やホワイトボードなどに書き出し、全員で共有・確認することが大切。口頭だけで進めると、やはり主観的になってしまいます。
そして提示された問題に対し、ここから"なぜ"を問い、その"理由"を考えて答えます。このとき注意したいのは、その理由(原因)は事実に即して述べなければならないことです。空想や憶測で「おそらく○○だから」では理由にはなりません。また原因を個人のせいにすることもアウト。その個人が気をつけても別の人が同じ問題を起こさないとは限らないからです。
このようにして、前に提示した理由に対し再び「なぜ?」を問う。これを反復する。一般に「なぜ?」は5回反復するものとされますが、これはあくまで経験則。5回より少ない、または多い回数で根本原因に達することもあります。最後に、これ以上「なぜ?」を問うても無意味であるという段階に達したら、それを根本原因とみなし、それに対して再発防止策を導く。ざっとこんな手順です。
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