登山届を提出する人が伸び悩んでいる(イメージ:写真AC)

■大切だけど見落としてしまいがちなもの

「これで準備は万端、朝が早いから今日はもう寝るとしよう…」。と、思ったのも束の間、ハルトは何か忘れものがあるような気分にとらわれました。しかし登山の支度は再確認して問題はなさそうだったため、まあいいやとそのまま寝入ってしまいました。

翌朝早く、高校時代の同級生、村上くんが車でやって来ました。これから2人で上越国境の山へ向かうのです。村上くんは運転しながらハルトに尋ねました。「アレはもう提出したかい? 僕はうっかり忘れてしまったよ」。と、ここで、ハルト自身もアレのことを思い出したようです。「僕もだ、村上、アレを出し忘れた!」

彼らがこだわる「アレ」とは登山届のことです。実はこの「登山届」、提出する人が伸び悩んでいるのが現状です。村上くんは言います。「これから登る上越国境の山域も、山岳遭難の総件数のうち登山届が提出されていたのは2割程度だったと山のニュースでやっていたよ」

登山計画はしっかり立てているものの(イメージ:写真AC)

「僕らも反省しなきゃいけないね。なぜ登山届を出しそびれてしまうのだろう」とハルト。「そりゃ、あまり重視していないからじゃないか。ほとんどの人が、いつもどおり何事もなく無事に山に登って降りて来られると思っているから。ところが、何か事が起こってはじめて周辺が『こりゃたいへんだ。どの山のどのコースだ?』と騒ぐことになる」