国立研究開発法人防災科学技術研究所理事長の林春男氏と、関西大学社会安全センターセンター長の河田惠昭氏が代表を務める防災研究会「Joint Seminar減災」(事務局:兵庫県立大学環境人間学部教授 木村玲欧氏)とレジリエンス研究教育推進コンソーシアム(会長:林春男氏)の第2回共同シンポジウムが2022年2月14日に開催され、株式会社ウェザーニューズ航空気象チーム マーケティングリーダーの小山健宏氏と国立民族学博物館超域フィールド科学研究部教授の林勲男氏が講演した。シンポジウムのテーマは「地域性を考えた減災・レジリエンスのあり方」。小山氏は「航空気象(ドローンやヘリ等)から見た災害の地域性」、林氏は「災害文化の特徴とレジリエンスを中心に」をテーマにそれぞれ発表した。2回に分けて講演内容を紹介する。

 

ウェザーニューズの事業展開について

ウェザーニューズは、ある船会社の事故を受けて、船乗りの命を守りたいということで始まった会社です。気象情報を通じていざというとき人の役に立ちたいという思いがあります。創業のきっかけになった航海気象のチームでは、全世界7000隻を常時モニタリングし船の航海計画の策定支援などをしています。私が所属している航空気象チームでは、エアライン、ヘリコプター、ドローンなどをサポートし、ベルト着用サインの点灯やミールサービスのタイミングまで、きめ細かい支援を行っています。道路気象チームでは、高速道路や国道などの交通について、さらに鉄道気象チームでは、JRや私鉄などの運航についてサポートをしています。このほか、最近は再エネということで、エネルギー気象チームが電力会社向けに電気の使用量予測や太陽光発電量予測のサポートを行っています。流通気象チームでは、コンビニやスーパーマーケット向けに、ホットドリンクがいつ売れるのか、肉マンはいつ売れるのかというような需要予測サービスまで行っています。今回は、ヘリコプターやドローンの話を中心にさせていただきます。

ヘリコプターによる災害対応

ウェザーニューズが位置情報を扱うようになった一番大きなきっかけは東日本大震災です。当時はホワイトボードでヘリコプターの管理をしていました(図表1)。ウェザーニューズからも宮城県、岩手県、福島県等にスタッフを派遣して現地で気象関係のサポートをしていましたが、マグネットや文字情報では、正直、ドクターヘリがどこを飛んでいるのかリアルタイムには分かりませんでした。そのため、ヘリコプター同士がぶつかりそうになったり、「急遽こちらに行かなければいけない」という通信がうまくできなかったりすることがヘリコプターの災害対応において大きな課題でした。そこで、GPSとイリジウム衛星通信によりヘリコプターの位置情報を入手するFOSTER-CoPilotを開発し、サービス提供を始めました(図表2)。まずはドクターヘリを対象に、機器をドクターヘリの機内に搭載し、衛星を通じてWeb画面に位置情報を表示するサービスを開始しました。幸い、ドクターヘリへの導入は順調に進み、複数のドクターヘリを一つの画面で共有し、「ここに集まっている」「ここに患者がいるから、こちらに行ってください」といったやりとりができるまで連携が進みました(図表3)。弊社は気象情報を扱う会社なので、雨雲レーダーなどと重ね合わせることで、「ここのヘリコプターは雨雲を避けて飛んでください」「こちら側は特に雨雲の心配はないので、そのままミッションを続けてください」というきめ細やかなサービスもできるようになりました(図表4)。