ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
消防士のための体力維持増進プログラム
柔軟性と持続性のある身体作り
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
サニー カミヤ の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
今までにも何度か、消防士のためのフィットネスプログラム等を紹介させて戴いたが、今回、カナダの国防省が発行した「消防士のための体力維持増進プログラム」は、消防現場活動出活用する器具に応じた筋肉の付け方、また、さまざまな消防現場で必要な筋肉を維持増強させることを目的とした内容で、とてもよく考えられている。
■「消防士のための体力維持増進プログラム」(カナダ国防相)
https://www.cfmws.com/en/AboutUs/PSP/DFIT/Fitness/Documents/Firefighter%20Training%20Manual%20Eng%202001.pdf
9.11の米国同時多発テロ事件以降、世界の消防士達が目指す身体は、筋肉ムキムキのボディービルダーのような短期決戦型の身体ではなく、長時間の消防現場活動でも持続でき、四肢の動きが柔軟で、ウェットスーツなどもスムーズに着用でき、空気呼吸器のエアーの消費が少なく熱中症や低体温症に強いなど、現場に即した身体が求められていることは知っている方も多いと思う。
カナダでは、各消防隊員が高度な体力を達成し維持することは、要救助者の救命率向上はもちろん、現場活動隊員相互の安全管理にもつながり、また、健康な精神とマインドを隊員達が自主的に自ら育てることで、ストレスのない組織作りの基本になると考えられている。
今回、開発された「消防士のための体力維持増進プログラム」は、カナダ軍支援機関とヨーク大学の運動生理学研究所が、カナダ市消防局の消防士達の各種器具を用いた現場活動における身体の動きをセンサーなどを用いて可動域などを調べ、実際に適切なレベルの現場適応能力を達成できるように研究されており、栄養指導までを含んだ、無駄のないトレーニングメニューになっている。
素晴らしいのはログブックまで添付されているため、体力増進が楽しめる内容になっている。
また、年齢別のトレーニングゾーンと呼ばれる目標の心拍数の計算方法、シャトルランの平面図やインターバルの休憩時間と個人の目的に応じたプログラムメニューの選択方法なども詳しく指導されている。
消防士向けの体力維持増進プログラムは、他にもいくつか紹介されており、下記は、消防士の採用試験に出てくる体力テストをすべてクリアするための具体的なメニューなどが紹介されている。
BEAT THE CPAT part #1 THE WORKOUT(出典:Youtube)
BEAT THE CPAT part #2 THE WORKOUT(出典:Youtube)
最小限の運動器具とスペースを用いて、簡単に行えるものばかりで、消防士になる前の学生達も中古の運動器具をネットオークションで買いそろえたりしているらしい。
また消防団では、上記のトレーニング施設や運動器具を受験希望者に提供するほか、常備消防に入るための学科試験準備講習なども行われていて、非常に協力的にコミュニティーサポート活動を行っている。
日本でも昔から、様々な運動器具を使って、回数を決め、体力錬成を行っているが、消防現場での具体的な機材活用や救助活動を前提とした柔軟性と持続性のある身体作りを目的とした筋肉トレーニングメニューは少ないと思われる。
いずれは、「消防士のための体力維持増進プログラム」のような内容で、トレーニングの目的や栄養指導、メンタルサポートまでを総合的にパーソナルコーディネートする施設が出来るかもしれない。
日本では、クールビズのシーズンでお腹が目立つ季節になったが、私もこういう記事を書くだけでなく、昔のレスキュー隊時代の身体に近づけるよう、少しずつ、身体を動かさなければならないと思っている。有言実行!
(了)
一般社団法人 日本防災教育訓練センター
https://irescue.jp
info@irescue.jp
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方