何をもってBCPを発動するのか、判断は各企業に委ねられている(写真:写真AC)

■「BCP発動」の意味と意義

災害が発生すると、BCP策定企業の多くは「BCPを発動」して危機に対処します。この「BCPを発動する」という言葉、企業によってはイメージがひとり歩きしていることもあります。ある会社は「緊急避難を開始した」、別の会社では「災害対策本部を立ち上げた」 ことをBCPの発動と呼んでいます。

いずれの場合も災害発生初期における対応の一環であり、広い意味ではBCPの一部ですから、このような使い方は必ずしも間違いというわけではありません。しかし本来の「BCPの発動」とは、インシデントがディザスター(事業活動を麻痺・停止させる事態)になり「その状態が続けば事業の存続を危うくしかねない事態に陥る」ことが判明した時点で宣言するものです。

事業活動の停止イコールBCP発動とは限らない(写真:写真AC)

BCPの発動をきっかけに何が変わるのかというと、通常の復旧活動とは別に代替資源の調達など戦略的な手段を実行に移して早期に中核事業を再開することになります。したがって細かいことをいえば、初動の時点でBCPの発動を宣言してしまうと、本来の意味でのBCP発動宣言の意義や目的が希薄になってしまうか、以後は宣言する機会がなくなってしまうという矛盾も起こります。

ところで、このような本来的な意味での「BCPの発動」を決める基準は何なのでしょうか。そしてマルチハザードBCPでは、インシデントの種類によってBCP発動基準や発動のタイミングは異なるのでしょうか(あるいはすべて同じ?)。今回はこれらについて考えてみたいと思います。