2021/11/01
防災・危機管理ニュース

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)や米航空宇宙局(NASA)は10月29日、同日午前0時35分(日本時間)に大規模な太陽フレア(表面の爆発現象)が発生したと発表。NICTでは高エネルギー粒子の飛来などにより、短波通信や通信・放送衛星に障害が生じたり、全地球測位システム(GPS)による高精度な測位の誤差が大きくなったりする恐れがあるとして、注意を呼び掛けたが、11月1日にはフレアの影響は同日朝に収まったことを明らかにした。
フレアにより放出されたコロナ(上層大気)のガスは、予想より遅く、10月31日夕方に地球へ到来。NICT広報部によれば国内外で「電波障害やGPS測位等への影響は特に確認されていない」という。同機構では、コロナのガスが到来した場合は影響が数日間続くとしていたが、今後も社会的な影響が出るほど大きな乱れはないと考えていると広報部ではコメントしている。
太陽フレアとコロナによる地球への影響は?
太陽フレアは、太陽の黒点群の領域で生じる爆発現象。この現象に伴い、強い紫外線やX線、電波等が放射されるほか、高温のガス(コロナ)が放出されることがある。発生したフレアの最大値により、小規模なものからA、B、C、M、Xの順にクラス分けされている。太陽コロナとは、太陽を取り囲んでいる電気を帯びた高温のガスで、皆既日食の時などに月に隠された太陽の周りに明るく輝いて見える部分。この太陽コロナの一部が太陽フレアなどによって吹き飛ばされ、塊となって飛んでいくものがコロナガスと呼ばれる。コロナガスが地球にぶつかることで、地球の磁場や電離圏が乱され、通信障害などが起こる。

人体の影響や大規模停電はない
NICTによれば、コロナガスそのものが人体などに何か影響を起こすということはないという。また、通信以外で医療機器の誤作動など影響があるかについて広報部に聞いたところ「地上における電子機器の誤作動などの影響はないと考えられてる」としている。
ただし、過去には2017年9月6日にX9.7という大規模な太陽フレアが発生し、GPSの1周波単独測位の誤差の増大や米国では防災無線が利用不能になるなどの障害が報告されたという。また、1989年3月には、X4クラスの太陽フレアが発生し、この際は太陽からのコロナガスの到来により、かなり大きな地磁気の乱れが生じ、これにより発生した地磁気誘導電流により、カナダのハイドロ・ケベック電力公社の電力網が影響を受け、約10時間の停電が発生した他、衛星障害事例が多数確認されているという。
こうした宇宙天気の社会への影響評価については、「科学提言のための宇宙天気現象の社会への影響評価」にまとめられている。
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