2021/10/31
防災・危機管理ニュース
地震や台風、集中豪雨で危険が迫り、我が身を守るための情報を得ようと自治体のホームページにアクセスする。しかし、なかなかページは開かない。最悪なケースではエラー表示だけが画面に映し出されるーー。
残念ながら災害発生前後に少なくない自治体のWebサイトで見られる現象だ。政府も懸念を抱いている。2019年に140ヶ所の堤防を決壊させるなど東日本各地で甚大な被害を起こし、390自治体に災害救助法を適用させた台風19号。この被害を受けて設置された内閣府の「令和元年台風第19号等による災害からの避難に関するワーキンググループ」が実施した自治体向けのアンケートでは、次の設問が設定された。
<台風第19号では、一部の市町村のホームページがアクセス集中によりダウンした事例があったと報道されています。 貴市町村におけるホームページへのアクセス集中に対する対応状況について当てはまるものを全て選んでください。>
2019年の年末から2020年の1月半ばまでに1740自治体のうち1595が回答したこのアンケートで明らかになったのは、約5割にあたる849自治体がホームページのアクセス集中の対策を実施していたこと。一方、約4割の658自治体が「何も対策をしていない」と回答していた。

対策をとっていた自治体が答えた方法で最も多いのが「検索エンジンに一時的に複製されたページ(キャッシュページ)によりアクセスを分散させるようにしている」だった。対策を実施していた自治体の半数以上の460自治体がこの方法を答えている。
キャッシュページによるアクセス分散を無料で自治体に提供しているのがヤフーだ。同社の災害協定プロジェクトマネージャー関口和明氏は「東日本大震災をきっかけに始まったこの取り組みは、今年の11月で10年を迎えます。これまでに都道府県と市区町村をあわせて1344の自治体と災害協定を結びました。自治体の持っている情報、私たちは命を守る情報と言っていますが、それを住民の方に届けるための協定です」と説明する。

協定を結ぶと、警戒レベルが4以上の避難情報が自治体から発表されたときと警戒レベル4に相当する土砂災害警戒情報が発表されたときに、Yahoo!検索を使って自治体名を検索すると自治体オリジナルのホームページではなく複製したキャッシュサイトが提示される。情報を求めている住民がYahoo!検索で自治体名を検索し、提示されたサイトをクリックするとキャッシュサイトにつながり、情報を得ることになる。この方法でアクセス集中によるオリジナルのホームページのダウンやつながりにくさを回避する。
複製されたキャッシュサイトはヤフーのサーバー上に置かれている。「2021年に日本を直撃した台風9号や14号、8月の大雨のときには非常に多くのユーザーをキャッシュサイトに誘導できました」と関口氏は成果を語る。
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