リスク低減策は守るべき対象を見すえ、まずは「変化球」から入る(写真:写真AC)

■被害の様相はハザードごとに異なる

前回は、リスク低減対策を直球の前に「変化球」で考えることの必要性を述べました。直球とは、建物の耐震補強のようなストレートな対策のこと。変化球とは日常の業務慣習や業務プロセスを改善することにより、非効率な業務活動がなくなり、災害発生時の人的被害や業務の停滞、復旧の手間を減らすことができるというものでした。

災害はいつ何時起こるか分かりません。災害対策の予算不足や効果に対する疑問がネックとなっているならば、手をこまねいているよりも、まずはこうした「変化球」から着手するのが得策です。

整理整頓されたオフィス空間(写真:写真AC)

3Sや5Sを通じて整然と物理的秩序が保たれている職場では、どこに何があるのか見通しが効きますから、火災リスクに対して「火災の発生原因を減らせる」「火災をボヤで抑えられる」「避難が容易である」といった効果が期待できます。地震ならば「被災箇所の特定が容易」「散乱した書類や工具類の後片付け・復旧が容易」などのメリットもあります。

その一方で、リスク一つ一つは顕在化した時の被害の様相がまったく異なる側面があることも確かです。では「何を対象」に「どんな対策」を講じればよいのでしょうか。

後者の「どんな対策」については、ハザードの種類ごとにさまざまなベター/ベストプラクティスが出揃っていますから割愛します。ここでは前者の「何を対象」とするのかについてフォーカスしてみたいと思います。何しろ会社の事業運営には多種多様な経営資源が関わっていますから、守るべき対象を絞り込まないことには先が進みません。