政府は経済制限を段階的に緩和する方向だが(写真:写真AC)

緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が全面的に解除へ。政府はワクチン接種証明や検査の陰性証明など、感染リスクが低いことを示す仕組みを活用しながら段階的に行動制限を緩和していく方針です。企業は今後、こうした動きにどう対応すべきか。広く意見を紹介するシリーズ第2弾は、危機管理のコンサルティング事業を行うLogINラボ代表の多田芳昭氏に聞きました。

国内のコロナ対策はすでにルール切り替えの段階

 
多田芳昭氏
LogINラボ(ロジン ラボ)代表

一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。

感染させるリスクは低減しない

「ワクチン・検査パッケージ」を活用する趣旨は、日常生活や経済活動における感染リスクを低減することにあるはず。この場合のリスクには、自分が感染するリスクと他人に感染させるリスクの2通りがあります。分けて考えないと適切な判断はできません。

自分が感染するリスクに関しては、重症化や致死率の面でワクチンに効果があることは科学的事実として間違いなくいえる。しかし他人に感染させるリスクについては、ワクチン自体が「感染させないこと」を担保するものではありません。体内に侵入したウイルスの増殖を抗体によって抑えるのが基本的な仕組みですから、感染を防ぐわけではない。

ということは、ワクチン接種が進むことで、無症状者や軽症者は相対的に増える可能性がある。外で活動する限りにおいて、ウイルスに暴露するリスクは接種・未接種を問わず同じだからです。そこで軽症ということは、医院に行かない、PCR検査対象にならない人が増えることでもあります。

そうした人が動きまわれば、本人はPCR検査対象にならないとしても、感染自体は拡大の方向にふれる。今回の第5波で陽性者がこれだけ増加し、おおむね4対1で未接種者の比率が高くなったのは、そういうことだと思う。ワクチン接種者が感染を拡大させ、未接種者に発症が多く出た、という仮説が成り立ちます。

社会リスクとしてすでに許容範囲になってきている(写真:写真AC)

かといって、ワクチンに意味がないとか、行動制限を緩和すべきでないといいたいわけではありません。経済をまわすにあたり、リスク対策上、わざわざ接種者と未接種者を区別する理由はないということです。接種が進んだこともあり、すでに新型コロナの致死率は季節性インフルエンザと同等になってきています。

社会リスクとしては、すでに許容できる範囲。季節性インフルエンザの流行期と同程度の経済活動を、接種・未接種の区別なく行っていくべきです。