変わる技術環境と社会の意識

現在は災害や事件・事故が発生すると、現場のリアルな映像が次々とSNSにアップされる。近隣住民やその場に居合わせた市民の投稿は地上波のTVニュースより早く、かつ生々しい。これを防災やBCPに役立てようという動きがいま、急速に広がっている。インターネットに刻々と上がる無名性の投稿をどこまで役立てられるのか、今後どのような可能性があるのか――。SNSを通じた危機情報の配信サービスに取り組むスペクティ(東京都)取締役COOの根来諭氏に聞いた。

 
株式会社Spectee(スペクティ)
取締役COO
根来諭氏
「気象・災害」の絞り込みによりダッシュボードに表示された「スペクティプロ」の危機情報。どこで何が起きているか一目瞭然

――SNSにもとづく危機情報配信サービスのメリットはどこにありますか?
一つはやはり、早いことです。例えば2年前、京都アニメーションの放火事件がありました。7月18日午前10時37~38分に発生したのですが、当社の配信サービス「スペクティプロ」では、3分後の10時40分に第一報をあげています。

その後、近隣住民や通行中の人たちがさまざまな角度で撮った写真を50件以上SNSに投稿し、NHKのニュース速報が流れたのが11時25分。それももちろん早いのですが、当社はそれまでに50報以上を出している。

これが工場の火事であれば、情報取得の早さが初動を左右し、その後の復旧作業や代替措置に影響を与えることはいうまでもありません。サプライチェーンマネジメントを担当している部署であれば、自社のサプライチェーンで起きた問題を即座に知るか、数時間後に知るかで、その後の対応は大きく変わってきます。

もう一つ、SNSにもとづく情報は画像が一緒に入ることが大きい。ひとことで火事といっても、炎が上がっているのか、ほかに延焼しそうなのか、くすぶっている程度なのか。状況が一目瞭然ですから、意思決定の迅速性と正確性は大幅に高まります。

実際、事故・災害の現場はパニックになっているので、電話などで現地の状況を詳しく伝えるのは容易ではない。情報を受け取る側も、把握するまでに時間を擁します。それがTVニュースより早く、現地の情報が画像付きで分かる。海外の社員の安全を守る部署などには特に有用だと思います。