2021/09/09
【インタビュー】リスク情報の進化と活用
必ずしも災害が起きるわけではない
という難しさのなかで「生きた情報」を模索する
気象庁・土砂災害気象官に聞く
7月3日に静岡県熱海市で発生した土石流で濁流にのみ込まれた伊豆山地区は、土砂災害が発生した場合に住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがある土砂災害警戒区域に指定されていた。自治体任せにせず、自分の命を土砂災害から守るためには、防災気象情報の入手と早めの行動が不可欠だ。
土砂災害警戒情報から避難指示までの実状
土砂災害が起きやすい国土にいる
静岡県熱海市の伊豆山地区で7月3日に死者25人、行方不明者3人、128棟の建物被害(8月25日現在)を出した土石流は、山地が多く急峻な勾配が続く日本の地形の危険性を改めて認識させる災害となった。
気象庁大気海洋部気象リスク対策課に所属する土砂災害気象官の井川利江子氏は「日本の国土は山地が多く脆弱な地質が多い。台風や梅雨による降雨や、雪も多く、世界的にみても降水量の多い地域です。地震と火山が多いことが土砂災害を起こしやすい地盤の要因にもなっています」と、国土の特徴を説明する。
熱海市の土石流は、盛土の影響が強く疑われている。しかし梅雨前線の影響で継続的に雨が降っていたことから、井川氏は「盛土の影響を除いたとしても、あれだけの雨が降れば土石流は起こりうる」と指摘。7月1日から3日にかけての熱海市の連続雨量は449㎜に達していた。
土石流が起こる前日の7月2日12時30分の段階で、熱海市には土砂災害警戒情報が発表されていた。気象庁と都道府県が協力して発表する防災気象情報だ。
これは市町村長が避難指示の発令を考える際に参考にする情報で、住民が自主的に避難するための判断材料としての役割も担う。命を奪うような土砂災害がいつ発生してもおかしくない非常に危険な状況を伝える重要な情報と位置づけられ、危険な場所からの全員避難が必要な「警戒レベル4」に相当する。
【インタビュー】リスク情報の進化と活用の他の記事
- 危機情報を避難行動に結び付けるために何が必要か?
- 気象情報は劇的に「早く」「細かく」なっている
- 意思決定に使える情報をいかに「早く」「多く」知るか
- 被害を即時に生々しく伝えるSNSの可能性
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方