2021/08/30
【インタビュー】リスク情報の進化と活用
加速する情報収集のデジタルシフト
7月3日に熱海市伊豆山地区を襲った土石流の映像が、地上波のTVニュースで繰り返し流れた。自然の猛威を衝撃的に全国へ伝えた映像は、住民がツイッターに上げた投稿だ。スマートフォンが普及し、誰もが「記者」になり得る時代。SNSを活用した防災・危機管理とその可能性について、インターネットを通じたリスク情報配信を行うJX通信社(東京都)マーケティングマネージャーの松本健太郎氏と、プロダクトマネージャー補佐の鴻谷宙輝氏に聞いた。
マーケティングマネージャー
松本健太郎氏
プロダクトマネージャー補佐
鴻谷宙輝氏
――水害が多発しています。SNSにもとづく危機情報がどう配信されたのか教えてください。
鴻谷 7月の静岡・熱海の災害を例にすると、当社の「ファストアラート」が伊豆山地区の土石流を最初に検知したのが3日の午前11時5分。それから続々と情報が入り、地上波のTVニュースで何度も使われた動画(=編集部注:猛烈な勢いで斜面を駆け下る土砂が民家を破壊して赤い建物に襲いかかる動画)を11時45分に検知しています。
TVニュースで土石流の速報が流れたのは、当社が最初に情報をキャッチ・配信してから約1時間半後。周辺の住民や企業にとって、1時間半のタイムラグはその後の行動に大きく影響します。早い情報収集という点で、SNSの有用性は確実にあります。
当社では土石流発生の前日にも、伊豆山の現場から7.5㎞離れた地点で、のり面崩落の情報をとらえていました。以降ずっと雨が降り続いているのは気象庁の情報から分かりますから、周辺のどこで土砂災害が起きてもおかしくない状況にあることは容易に判断できる。情報を組み合わせることで、より確かな根拠で対策を打てると思います。
7月3日は熱海の土石流以外でも、複数の情報を検知していました。例えば沼津の黄瀬川で家が流された動画を9時39分に配信。下流の橋に引っかかるおそれがありますから、自治体はできるだけ早く住民に注意や警戒を呼びかけたいはずです。TⅤニュースやラジオ、住民の通報や職員の見回りなどでも情報は知れますが、こと災害においては1分1秒でも早いほうがいい。
――避難の迅速化にも役立てられますか?
鴻谷 豪雨の場合、ひとたび災害が発生してからの避難は危険がともないます。ただ、前述したのり面崩落や家屋流出の例からも分かるとおり、周辺で起きている事象をリアルタイムで知れれば、それを早期避難や2次災害防止に役立てることは十分可能です。
避難情報は自治体が発表し、その背景には気象庁の情報があります。公的な情報が指針となるのはもちろんですが、そこにプラスして、SNSにもとづく危機情報も参考にしてもらう。個々人がそれぞれSNSの投稿を見たり、検索したりするのは現実的ではありませんが、当社が選別をかけた確度の高い情報であれば、一つの指標になり得ます。
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