出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

放水姿勢にはさざまざな考え方がある。火災対象物の現場状況を安全、かつ有効にコントロールしたいとき、既存の消火アタック装備に応じて攻め方が変わってくる。

下記のビデオでは次のような理由で、できるだけ低姿勢を保つ必要がある場合に用いる放水体制である。

・フラッシュオーバーなどで火炎が吹き出す恐れがある場合。
・黒煙で建物内部の視認性が低い場合。
・低角度からの放水圧力により、可燃物を移動したり、破壊しながら消火する必要がある場合。
・焼け朽ちた柱や壁を破壊して、消火活動ゾーンを安全にしたい場合。
・消火活動エリアに落ちている釘やボルト、ホースを破損したり、痛めるような金属類や木片などが払う必要がある場合。
・立位姿勢での長時間放水が予想される場合。
・低姿勢でないと火点に放水が届かない場合。
・送水圧力が高く、地面などの摩擦抵抗により、水圧を抑えたい場合。
など



出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

以下、順を追って解説する。

1、指導者はデンバー市消防局のデーブ・マクゲイル方面大隊長

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

2、放水員の位置は筒先の止水レバーに手が届く位置(約1m後方)
 

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

3、放水補助員は放水員の後方約1.5m位の位置。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

4、まずは、放水員、放水補助員もホース側の膝を立てて、つま先は45度くらい外側に向け、放水しながら前進しやすい体制を取る。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

5、放水員は、左足のつま先を立て、ホースを脇の下にしっかりと確保し、右肘を膝の内側に当て、両手で下側からホースを保持する。左足のつま先を立てていないと壁が倒壊した場合など、咄嗟の避難に素早く対応できない。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

6、筒先の止水レバーは左手で操作する。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

7、筒先を保持しないことにより、旋回させたり、左右に払ったり、短管特有なウォーターコントロールによる、放水パターンを自由に使うことができる。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

8、前進するエリアの落下物を放水で除去したい場合は、筒先近くのホースを抑える。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

9、基本的に棒状注水となる。筒先タイプの交換も可能。
ノズルを交換するための結合金具や交換、一線増加要領は下記記事を参照。

■消火活動中にホースを延長したくなったらどうする?
早くて安全なエクステンションホース結合方法
http://www.risktaisaku.com/articles/-/4466

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering


 10、基本的に放水補助員は放水員と同じ姿勢を取るが、右膝でホースを押さえて、放水圧力に耐えられるように保持すること。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering


11、長時間放水で、右膝での保持が疲れた場合や腰痛を発した場合、両手でホースを押さえることができる。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

12、低姿勢の高さ、右足の開き方、右脇、右膝でのホースの保持体制も同じ。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering


 13、低姿勢のまま、前進する際は、放水員の号令で、放水補助員は右足から同じ歩幅を保ちながら、移動するタイミングを合わせて前進する。前進要領を練習するときにはホースなしで行うと息を合わせやすい。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering


 14、屋外からの放水に限らず、屋内での放水時にもローアングル・ウォーターコントロールを応用できる。

出典:「Nozzle Operator and Backup Firefighter Tips」Fire Engineering

ローアングル・ウォーターコントロールの特性は、放水圧力による反動方向のベクトルが地面に向かうことで、ホースの地面への接地抵抗を活かせることができ、放水隊員への体力も負担が少なくて済むこと。

また、放水しながらの移動も直進だけでは無く、左右へも容易に対応できる。折り膝放水のため、立位での放水時の放水圧力の急上昇による転倒、地面が滑ることによる転倒もかなりの高確率で、予防することができる。

ウォーターコントロールには、基本的に隣接建物、はしご車や2連梯子上からの俯瞰注水などのハイアングル、立位によるミドルアングル、折り膝によるローアングルがある。どれもサイズアップし、消火する対象によってノズルを選択して、放水フォーメーションを変えることで消防活動を有利にできる。

いかがでしたか?

日本の消防士はニーパッドを着用していることも多いため、アメリカの消防士達のように防火衣のズボンの膝パットのみよりは、ローアングル・ウォーターコントロールを行いやすいと思う。

放水体制の工夫で、消火戦術におけるスピードや有効な攻め方が変わってくるだけでなく、活動エリアの安全性も確実に高めていくことの重要さを伝えている今回のビデオから、消防を科学することの楽しさをさらに深く感じた。

(了)


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