2018/03/28
事例から学ぶ

ボトムアップで全社採用も
「じゃらん」「ホットペッパーグルメ」「ホットペッパービューティー」など、日常の消費領域に関わるサービスを広く提供するリクルートライフスタイル。感染症対策に注力している。専門業者による作業のほか、日頃から組織の風通しの良さを感じさせる報告や協力も行い、改善を進めている。
日々の感染症予防として、少なくとも月2回、同社内に約120カ所ある会議室のテーブル、ドアといった手が触れる場所を中心に、消毒液を吹きかけてガーゼで拭く作業を実施。消毒液はアルコール製のものだけではなく、大豆など自然由来のものも活用。「ダイバーシティの観点から、肌が弱い人や妊婦などへの配慮が必要」と総務グループの水口泰治氏は語る。
また水口氏は「(消毒液など)モノを置くだけでは意味がなく、感染症防止に取り組む仕組みがないと人は守れない」と指摘。自席や会議室の消毒作業を従業員で行うことにより、衛生への意識も高まる。もともと同社は現場での気づきや創意工夫を上部組織に遠慮なく上げていくボトムアップを大切にする社風。たとえば、あるグループで工夫された冷蔵庫内の整理方法やゴミのわかりやすい分別などのナレッジを、全社の取り組みとして採用するケースも。現場に寄り添った仕組みとは何かを常に追求している。「レイアウト変更がある際には、廃棄キャンペーンを行ってグループ対抗戦をするところもある」など、水口氏は現場のスタッフの創意と自主性が仕組み化のカギと説明した。

室内全体を抗菌仕様に
ボトムアップ型である同社には「エスカレーションルール」という危機情報をあげていくルールも徹底されている。一次的な対応窓口を置き、内容によって広報や人事といった担当部署に情報を振り分けていく。感染症については水口氏が対応。「現場で抱え込まず、相談をとにかくしてほしい」と水口氏は呼びかける。
こういった日常的な従業員による取り組みだけではない、大がかりな対策としては、株式会社デルフィーノケアが提供する室内で接触するすべての面を抗菌コーティングする感染予防対策サービスを利用。専用の噴霧器を使い、抗菌剤を霧状で噴射し、床・壁・天井やドアノブや電話の受話器、キーボードなど普段触れる全てのものにナノ単位の細かな抗菌剤の粒子を潜り込ませ、室内全体を抗菌仕様にする。特に従業員がずっとそこにいることが多い、コールセンターやエンジニア向けのオフィスで実施。感染症シーズンの冬前には実施する。細菌量を測るATP検査も行い、大きな効果を実感するという。
ATP検査では意外なことも判明。役員室で高い数値が出たという。機密性の高い個室であるがゆえに空気の循環が悪いほか、外部の清掃スタッフを入れないことが要因と推測する。重要情報の流出防止の意味もあり、水口氏は「総務のスタッフで役員室の掃除当番を決めて清掃している。もし役員の間でインフルエンザがまん延したら、それこそ事業継続の危機となる」と説明する。
同社の減災・縮災の対策にはパンデミック対応も重要な課題として盛り込んでいる。特に流行時に混乱が予測される未知の新型インフルエンザや鳥インフルエンザ、ノロウイルスといった感染症対策は重視。前述のデルフィーノケアの抗菌コーティングのような、外部のプロ事業者の力を借りることも想定している。今年から感染者数や発生率の統計をとり、今後の対策に生かす新しい取り組みも行っていく方針。
「企業としてとれる対策は最大限とっていきたい」とする水口氏。ただし一方で「大がかりな計画は大事だが、普段から取り組める具体的な仕組みづくりも大事」と指摘する。現場の取り組みを組織全体の底上げにつなげてきた同社。目的意識と向上心を持った普段の姿勢こそが危機を防ぐためのカギである。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
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