2021/06/08
【オピニオン】コロナ禍の出口はどこに
寄稿:3度目の緊急事態宣言を受けて
[提言]いま企業のリスク担当者に求められること

代表取締役 市川啓一(56 歳)
企業も「出口戦略」の検討開始
変異株による感染者増加が止まらない渦中ではありますが、一方でワクチン接種が本格化し、先行している国ではその成果があらわれています。日本でもやがては感染拡大がおさまり、収束に向かう時期が必ずや訪れることと思います。
その時、企業は現在展開している感染防止策を徐々に解除していくこととなりますが、その判断に悩むことにもなるでしょう。
何をきっかけに、いつ解除していけばよいのか、その基準が求められるでしょう。しかし多くの場合、隣を見て、他社に追随する動きになることが予想されます。

危機が増大していく最中にどう対応するかに追われ、後手にまわってきたという企業も多いことでしょう。先を見越すならば、まだ渦中にある今、一方で収束を見据えた出口戦略を考えることが必要です。何がどうなったら、どう解除に向けて動き出すのか。この出口戦略を考えることによって、どこに向かっていつまで耐えるのか、その出口に向かって今何をしなければならないかも見えてきます。
収束はいつか必ずやってくる
「今はまだ渦中にありそれどころではない」「目の前の対応に追われて余裕がない」「この先の見通しがまだ見えない中で出口を考えることなどできない」などの声もお聞きします。
確かに、これまでも先の見えない戦いを続けてきました。第一波の時に第二波、第三波の時に第四波、1回目の緊急事態宣言の時にそれが3回も発出されることを予想し、対応を考えていた人は多くはないでしょう。

しかし、いつかは必ず収束を向かえ、感染防止策を解除して通常の業務形態に戻る時は来ます。その道筋は考えておかなければなりません。登ってきた階段を降りる時は必ず来るのです。その降り方も考えておくことが必要です。
現在の対策をいつどう解除するか
多くの企業にとって、出社制限、会議制限、顧客訪問や来訪の自粛、出張禁止、座席配置の変更、業務手順の変更など、行ってきたさまざまな感染防止策を通常の状態に戻すことは、業務の効率化、ビジネスの拡大のために一刻も早く行いたいことでしょう。
感染リスクを高めることなく、迅速的確にこの判断を行っていくためには、自社の事業内容、感染リスク、社会、顧客との関係などから自社独自の判断基準を策定することが重要です。
拙速な判断は社内外の反感を招くことも考えられます。ワクチンの接種率、感染者数、感染ステージなどをもとに、具体的な判断基準を今のうちから早めに検討し、専門家の意見を聞くことも含め、慎重かつ的確な対応を準備していくことが今後求められると考えます。
【オピニオン】コロナ禍の出口はどこにの他の記事
- ワクチン接種 企業に求められる「安全配慮義務」とは?
- 「出口戦略」でいまやるべきことが見えてくる
- 感染対策の項目を第1回宣言時の半分に削減
- 「グレート・リセット」を踏まえた対応が必要
- 想定外に耐え得るようBCPとBCMSを見直す
おすすめ記事
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/25
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方