寄稿:3度目の緊急事態宣言を受けて
[提言]いま企業のリスク担当者に求められること

 
株式会社レスキューナウ危機管理研究所
代表取締役 市川啓一(56 歳)

 企業も「出口戦略」の検討開始

変異株による感染者増加が止まらない渦中ではありますが、一方でワクチン接種が本格化し、先行している国ではその成果があらわれています。日本でもやがては感染拡大がおさまり、収束に向かう時期が必ずや訪れることと思います。

その時、企業は現在展開している感染防止策を徐々に解除していくこととなりますが、その判断に悩むことにもなるでしょう。

何をきっかけに、いつ解除していけばよいのか、その基準が求められるでしょう。しかし多くの場合、隣を見て、他社に追随する動きになることが予想されます。

収束を見すえ企業も「出口戦略」の検討を開始するとき(写真:写真AC)

危機が増大していく最中にどう対応するかに追われ、後手にまわってきたという企業も多いことでしょう。先を見越すならば、まだ渦中にある今、一方で収束を見据えた出口戦略を考えることが必要です。何がどうなったら、どう解除に向けて動き出すのか。この出口戦略を考えることによって、どこに向かっていつまで耐えるのか、その出口に向かって今何をしなければならないかも見えてきます。

収束はいつか必ずやってくる

「今はまだ渦中にありそれどころではない」「目の前の対応に追われて余裕がない」「この先の見通しがまだ見えない中で出口を考えることなどできない」などの声もお聞きします。

確かに、これまでも先の見えない戦いを続けてきました。第一波の時に第二波、第三波の時に第四波、1回目の緊急事態宣言の時にそれが3回も発出されることを予想し、対応を考えていた人は多くはないでしょう。

コロナ禍もいつかは収束(写真:写真AC)

しかし、いつかは必ず収束を向かえ、感染防止策を解除して通常の業務形態に戻る時は来ます。その道筋は考えておかなければなりません。登ってきた階段を降りる時は必ず来るのです。その降り方も考えておくことが必要です。

現在の対策をいつどう解除するか

多くの企業にとって、出社制限、会議制限、顧客訪問や来訪の自粛、出張禁止、座席配置の変更、業務手順の変更など、行ってきたさまざまな感染防止策を通常の状態に戻すことは、業務の効率化、ビジネスの拡大のために一刻も早く行いたいことでしょう。

感染リスクを高めることなく、迅速的確にこの判断を行っていくためには、自社の事業内容、感染リスク、社会、顧客との関係などから自社独自の判断基準を策定することが重要です。

拙速な判断は社内外の反感を招くことも考えられます。ワクチンの接種率、感染者数、感染ステージなどをもとに、具体的な判断基準を今のうちから早めに検討し、専門家の意見を聞くことも含め、慎重かつ的確な対応を準備していくことが今後求められると考えます。