2021/06/08
【オピニオン】コロナ禍の出口はどこに
寄稿:3度目の緊急事態宣言を受けて
企業の課題と対応その2

リスク経験年数:20 年 匿名希望(43 歳)
国内外拠点の観点からの課題
国内は政府主導の対応が期待できない状況下、責任ある企業として社員の行動制限や感染時の対応、ワクチン接種基準等のガイダンスを適宜指示しています。海外は米国や欧州、ASEAN等で政府対応が相当異なり、個別に必要な対応を把握してグローバル基準を指示しています。
国内・海外ともに感染への「慣れ」を是とすることなく、新たな「常態」として状況変化に柔軟かつ適切に対応していくためには、OODAループをベースとした意思決定プロセスを危機管理部署のみならず管理職全体に普及させていく必要があると思っています。
また、特に製造工場やセールス部門、広報を中心に、対面・集団での業務実施が必要な部署に関しては、独自の感染対策基準やガイドを示し、ワクチン接種状況等を踏まえてこれを絶えず見直していくことが必要となっています。
生産性・働き方の観点からの課題
企業としての競争力向上・価値創造・社会課題解決が求められていますが、今後より一層自社の知見・ノウハウ・人財だけでは実行・解決できない環境になり、DXを含めたさらなるオープンイノベーションの促進が必須と考えています。

課題としては、出社率・対面制限等を設けていることもあり、社外メンバーを含めて熱量を肌で感じながら議論・施策を迅速に進める社内環境に乏しいこと。また既存オフィスやIT、人財マネジメント等の旧来型の制度や環境についても、成果をいかに最大化していくかという観点から、抜本的な見直しが必要となってきています。
また、これらによって企業・組織全体の文化を変えていく、よりパーパスドリブンの経営に変革していくという意識革命も求められます。すなわち、コロナ対応をチャンスとして組織転換するということです。
危機管理部署の観点からの課題
欧米で主流の考え方とは異なり、当社(日本の多くの企業も同様かもしれませんが)では、リスクを正確に分析し影響度・発生確率等のエビデンスベースで対応する準備が十分になされておらず、リスクが顕在化した場合は最低限での対応を前提としています。

しかし今後はSDGs/CSR と同じように、リスク管理に優れていることが企業としての価値になると考えています。コロナ感染対策のみならず、あらゆるリスクを絶えず分析し、必要な対応を先行的に準備していく必要があります。
政府・自治体への要望
今般の感染対策については、グローバルスタンダードで可及的速やかな対応、いわゆる「有事」を前提とした国家的な対応が必要だと思います。
日本の現状(感染対策、ワクチン開発、接種等)を鑑みると、非常に中途半端な施策、「平時」を前提とした対応に終始。本来、政府が実施すべき「有事」への切り替えができていないと考えます。国民の意識を含め、有事への切り替えを行うための、法制度等を含めた抜本的な見直しが必要だと思います。
【オピニオン】コロナ禍の出口はどこにの他の記事
- ワクチン接種 企業に求められる「安全配慮義務」とは?
- 「出口戦略」でいまやるべきことが見えてくる
- 感染対策の項目を第1回宣言時の半分に削減
- 「グレート・リセット」を踏まえた対応が必要
- 想定外に耐え得るようBCPとBCMSを見直す
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方