Ariake Arena (As of Oct. 2015 Tokyo Metropolitan Government) ©Tokyo 2020

オリンピック開催にあたり、考えられるすべてのリスクに同じレベルで対策を講じることは不可能だ。テロや事故、自然災害だけでなく、資材や人件費の高騰、交通渋滞などリスクを挙げ出したらきりがない。では、どのように対策を講じるべきリスクを選びだしたらいいのか。リスクマネジメントの手法を解説する。

編集部注:「リスク対策.com」本誌2015年7月25日号(Vol.50)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。役職などは当時のままです。(2016年8月17日)

一言でテロといっても、その手法は多種多様だ。集団で行うものからローンウルフというような単独犯が行うもの、暗殺や誘拐だけでなく、CBRN(E)(シーバーン)と呼ばれるように、化学(Chemical)、生物(Biological)、放射性物質(Radiological)、核(Nuclear)、爆発物(Explosive)などの大量殺傷兵器を使うものまで多岐にわたる。自然災害でも地震が引き起こす脅威は揺れだけでなく、火災、津波を伴うものもあるし、台風も強風だけでなく大雨や高波を引き起こすことも考えられる。その他、感染症や建物への不法侵入、サイバー攻撃(サイバー攻撃の方法もDDOSや標的型など多岐にわたる)、さらにリスクの幅を広げれば、インフラの故障や交通機関の事故など、数え出したら枚挙にいとまがない。 

こうしたリスクの中から優先して対処すべきものを洗い出し、対策を講じるといった組織的な管理活動をリスクマネジメントと呼ぶが、その際、オリンピックにおいて対処すべきリスクは、どのようにして選定すればよいのだろうか。

損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント株式会社ERM部長の落合正人氏は「リスクマネジメントにおいて重要なことは、その目的や方針を明確にすることだ」と指摘する。