宮城県と仙台市、兵庫県と神戸市のほか、住宅・不動産の業界団体も参加した

内閣府は14日、「大規模・広域災害時の災害救助事務の連携強化に関する協議の場」(宮城県・兵庫県)の第1回会合を開催。災害時に道府県から一部権限を希望する政令指定都市に移譲する災害救助法改正の方針について、2011年の東日本大震災を経験した宮城県と仙台市、1995年の阪神・淡路大震災を経験した兵庫県と神戸市のほか、仮設住宅を供給する住宅・不動産の業界団体も出席し話し合われた。道府県の広域調整権の保持を確認したうえで、権限移譲を行う場合どういった形が望ましいか意見を述べ合った。

災害時、都道府県は仮設住宅や支援物資といった市区町村への資源配分などを行い、国との協議も行う。しかし東日本大震災では宮城県と仙台市が仮設住宅の整備の遅れについてお互い責任を追及。2016年の熊本地震でも災害救助の役割分担などで熊本県と熊本市が対立した。

このため内閣府で検討会を開き、政令指定都市が仮設住宅整備などで費用を負担し実行主体となる代わりに、道府県から権限を移譲され国と直接協議もできるよう災害救助法を改正するという方針の報告書をまとめた。一方で食料や仮設住宅などの資源配分については都道府県が広域調整権を行使し従来通り行う。権限移譲にあたっては、道府県と政令指定都市間での同意が必要となる。

この日の会議では仙台市は仮設住宅や救助に関する業務を自ら行いたい旨を表明。権限移譲が宮城県から行われた場合、宮城県と協議をしたうえで、事業者団体に建設型仮設住宅を発注、借上型仮設住宅の場合は仙台市が被災者に対し募集を行い、不動産業者と契約、宮城県は最終的な契約書の審査と押印を行うといったスキームを披露した。宮城県はできるだけ県による一元的な対応が理想的としている。

兵庫県と神戸市は広域災害の場合、県と市で連携し仮設住宅整備を行うことを確認。阪神・淡路大震災の際は大阪府内の1070戸含め累計4万8300戸(神戸市内は2万9178戸)の建設型仮設住宅を整備したが、南海トラフ地震では3万6100戸(同4703戸)と想定していることを明らかにした。

建設型および借上型仮設住宅を供給する業界団体は権限委譲が行われた場合について「道府県と政令指定都市で計画が異なると不公平感が生じるほか、資材調達や施工方法が多様化することで迅速化に支障が生じる」(プレハブ建築協会)、「道府県と政令指定都市両方が救助主体となると、調整負担が2~4倍になる」(全国賃貸住宅経営者協会連合会)など、消極的な意見が目立った。また「災害時にたらい回しにされた経験がある。窓口を一本化してほしい」(全日本不動産協会)という意見もあった。

道府県が広域調整権を保持したうえでのある程度の権限移譲が必要という点では、ほぼ意見は一致した。内閣府では仮設住宅資材など物資配分について事前に決めておくなど、より具体的な対策について地方自治体や業界団体と検討会で調整を今後も進めていく。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介