2017/12/14
防災・危機管理ニュース
東北大学大学院歯学研究科・災害科学国際研究科、千葉大学、ハーバード大学などによる国際共同研究グループは12日、東日本大震災の津波により浸水した宮城県岩沼市玉浦地区の調査参加者860人を主な対象とし、震災前の地域在住高齢者の情報と、津波による死亡原因の関連性を調べた結果を発表した。重度の「うつ」傾向は津波死亡のリスクを高める、 友人との交流は震災当日の死亡リスクを高める傾向にあったが震災後約3年間の中期的な死亡リスクを低下させていた、などの結果が出た。
調査によると、津波に浸水した地域に居住していた860人の対象者の平均年齢は75.6歳で、33人が東日本大震災当日に亡くなった。海岸線から近くに居住する人ほど死亡リスクが高い傾向があるという。また「友人との交流が震災当日には死亡を増加させる傾向にあり、震災後には死亡を減少させる方向に寄与した」と想定。理由として「震災当日には、友人が多い人の方が、友人を助けようとする行動により避難が遅れる可能性が高まった」とし、震災後は「人々のつながりがあることは、有用な情報の入手可能性を増やしたり相談相手を増やしたりすることで健康を守る効果があると考えられ、これが友人と交流がある人の低い死亡率につながった」とする。
震災前に重度のうつ傾向だった39人のうち12.8%にあたる5人が亡くなった。想定される理由として「うつ傾向だった人は認知機能も低下しており、津波の危険や避難に対する決断を行いにくかった可能性がある」「うつ病の人に見られるネガティブな思考様式により、避難しても助からないに違いないなど、避難するモチベーションが低下してしまう可能性がある」などとした。重度のうつ傾向の人について、災害時に避難が遅れるハイリスクがあると認識することが必要としている。
■ニュースリリースはこちら
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20171212_02web.pdf
(了)
リスク対策.com:横田 和子
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方