ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
寝る前に締めて助かる命かな
寝室のドアを寝る前に閉めるだけで命が助かる可能性が!
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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「寝る前に寝室のドアを閉める習慣」を付けるだけで、火災によるやけどや一酸化炭素中毒・窒息などから命が助かる可能性が高くなる。
上記の表から、火災による死因別死者発生原因のほとんどは、やけどと室内延焼時に発生する一酸化炭素を吸引したことによる窒息事故であることがわかる。
また、2013年中の火災による死者数(放火自殺者等を除く)1278人のうち、逃げ遅れが670人で52.4%を占めており、そのうちの225人(17.6%)が、「発見が遅れ、気づいたときには火煙が周り、すでに逃げ道がなかったと思われる(全く気づかなかった場合を含む)」と報告されている。
さらに高齢者の死者が68.6%というデータから、寝室で自由に身動きを取ることができない状態で、火災発生から消防隊が到着するまでの間、逃げることも逃がすこともできなかったという事例がほとんどである。
実は米国でも同じ火災発生時の死亡原因が同じであり、多くの消防士が火災現場活動経験の中で、現場到着後、ホースを延長して住宅内へ侵入するまでが約10分。ドアが閉まっている部屋の内側は延焼していないことが多く、煙も薄く、室内にいた人を無事に救助できた事例が多かったことを経験していた。
また、逆に寝室のドアが開いた状態で見つかった人たちは、やけどか一酸化炭素などの有毒ガス中毒で死亡していたことも現場から学んでいた。
そこで、特に自力避難が困難な赤ちゃんや高齢者、障がい者など、寝室で長く過ごす家族を守る一つの対策として、「寝室のドアを閉めておくこと」で、助かる命が助かるのでは無いか?という観点に立ち、実験を行っている。
下記のビデオはUL Firefighter Safety Research Institute(UL消防士安全性研究所)の実験映像であるが、検証データとともに「寝る前にはドアを閉めることで、就寝中、寝室のドアが防火戸的な役目を果たすため、一定時間の延焼防止と一酸化炭素の寝室内への充満を遅くし、消防隊が到着するまで、やけどや一酸化炭素や有毒ガスによる窒息事故、火災熱による気道熱傷から赤ちゃんや高齢者、障がい者など、自力避難できない家族を守ることができる可能性が高い」ことを証明している。
■寝室への室内延焼による吸煙等窒息事故の予防検証データ
(計測値出典:UL Firefighter Safety)
https://ulfirefightersafety.org/posts/close-before-you-doze-fullscale-test-part-ii.html
Close Before You Doze Demonstration Event (出典: UL FSRI)
米国西海岸でも住居の耐震化により、地震による火災や粉塵、一酸化炭素、有毒ガスの発生などを防ぐため、建物内のドアや開口部、壁材、塗料などの難燃化や不燃化の技術が同時に進んでいる。
もちろん住居の内装や家具など、すべての内容物を不燃・難燃化することも大事だが、塗料や被覆材の燃焼による発生ガスの無毒化ができれば、さらに火災による死者の数は減少すると思う。
いかがでしたか?
日本でも、これから建築基準法で病院や特殊養護老人施設等福祉施設のドア、一般住居などの寝室ドアを防火ドアにし、また、耐震でない住居は寝室だけでも部分耐震(部分的な耐震構造)にすれば、火災による死者はもちろん、地震による倒壊事故、地震による火災発生時に起こりやすい一酸化炭素吸引事故を減らすことができると思います。
また、ほとんどの家庭では、誰もが寝室で長時間過ごすことが多いため、寝室のドアを閉めて寝るだけで、助かる命が助かる可能性が高くなることを火災予防広報に取り入れ、是非、日本でも多くの方々に「就寝前には寝室のドアを閉めること」を習慣にすることを広めて、大切な家族を守っていただきたいと願います。
近年の住宅火災による死者数は 1000 人前後の高い水準で推移しており、このうち 65 歳以上の高齢者が約7割を占めています。
毎年「住宅防火・防災キャンペーン」などで、敬老の日に「火の用心」の贈り物として、高齢者を火災から守るためには「早く知る」「早く消す」「火を拡大させない」という3点が重要といわれていますが、高齢者の場合は非常時に思うように動くことができないケースも考えられるため、4点目にできるだけ「寝室のドアを閉める」ことでさらに赤ちゃんや高齢者、障がい者などの災害時自力避難困難者を火災から守ることができると思います。
「寝る前に締めて助かる命かな」(サニー カミヤ)
(了)
一般社団法人 日本防災教育訓練センター
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info@irescue.jp
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