今回は、中国の労務問題の鍵となる世代間ギャップについて概観したいと思います。従業員を雇用する立場においては、この現実を直視し、どう対応すべきかは重要なリスク対策といえるでしょう。
中国は改革開放や一人っ子政策などによる「社会背景の変化」が激しく、その分、世代間ギャップの大きな国です。俗に、マスメディアなどでは1960年代生まれを60後(リウリンホウ)と呼び、それから10年ずつの間隔で70後(チーリンホウ)、80後(バーリンホウ)、90後(ジュウリンホウ)、00後(リンリンホウ)と続きます。
さらに、1980年代と90年代に生まれた世代を「ミレニアル世代」、1995年以降に生まれた若者を「Z世代」と名付け、彼らがそれ以前の世代とは大きくかけ離れた世代であることを特徴づけています。
このジェネレーションギャップ(世代間格差)を中心にして将来の中国ビジネスを考察することは、そのビジネスが成功するか失敗するかの大きな分岐点となり得ることなのです。
■60後~00後それぞれがもつ明確な特徴
中国に進出し長く経営を行ってきた日系企業は、60後~70後と呼ばれる1960年代~70年代生まれの社員が幹部を務めている場合がほとんどです。彼らの特徴としては「声が大きい」「宴会で浴びるように白酒を飲む」「権限や地位などに固執する」「メンツを何よりも大事にする」など、日本でよく聞く中国人のイメージをそのまま具現化した存在だといっても大きくズレることはないでしょう。
今ではすでに組織のリーダーとなってある程度の権限を持つ彼らを、どう管理し、腐敗させないかに苦心した日系企業も多いと思います。
しかしそれに続く80後と呼ばれる1980年以降に生まれた世代は、1979年に始まった一人っ子政策により、多くは甘やかされて育った一人っ子たちです。日本でもゆとり世代という呼び方がありますが、同じような感じでしょうか。
ただ、中には裕福な家庭に育った海外留学経験者もいて、彼らは母国に戻り活躍する若きエリート(海亀派)となり、現在の中国経済界を牽引する原動力ともなっています。彼らは、彼ら以前の世代とは異なり、大変スマートであり日本のビジネスマナーにも精通していることが多く、日本人が接するにはあまり問題はないといえるでしょう。
そして、その後を担う90後の若者も今では20代後半を迎え、中国統計局のデータから見ると約3.5億人となります。つまり、中国の人口の35%が90後の若者だというのです。詰まるところ、今後の中国での経済活動における彼らの影響度は大変大きく、労働力としてもまた購買力としても絶対に無視できない存在となっています。
さらに、彼ら中国ミレニアル・Z世代は、海外の同世代だけでなく、国内の異なる世代と比較しても大きな違いを有し、中国の現代を現す独特の世代といえるのです。
中国ミレニアル・Z世代が生まれた80~90年代は、1978年の改革開放が始まり経済が勢いづいたバブルの始まりの時期に位置し、これらの世代が一番多感な時期に中国のGDPが世界第2位まで上り詰めるという中郷の近代史上最も変化の激しい時期を経験している人たちなのです。
急速に変化する経済と社会のなかで育ち、インターネットやデジタルデバイスを通じてさまざま価値観に触れたことで、中国ミレニアル・Z世代が持つ独特な価値観は同世代の日本人にとっても理解できない部分が多いといわざるを得ません。
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