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河川洪水への対応としてタイムラインの考え方を検討・導入されている事業者の方も多いと思いますが、防災対応のトリガーとする際に特に注意しておかなければならない情報があります。それは、大規模河川や一部の中規模河川に対して発表される「指定河川洪水予報」(以下、「洪水予報」と表記)です。

洪水予報の中では「氾濫警戒情報」や「氾濫危険情報」などが警戒レベル相当の情報として伝えられます。それらの情報を利用して判断をする予定の場合、災害が発生するまでの猶予時間(リードタイム)がどの程度と想定されているのかについて今一度確認する必要があります。なぜなら河川によってそうした情報が発表される予定のタイミングが異なるからです。

「洪水予報の○○という情報ではきっと○時間程度のリードタイムが確保できるはずだ」といった程度の認識で計画を立てるのか、あるいは「○○という情報で担保しようとしているのは○時間のリードタイムだ」と分かった上で計画を練るか。おすすめはもちろん後者です。今回の記事では、河川によってリードタイムは異なるという点とリードタイムの調べ方を中心に解説していきます。

河川によって異なるリードタイム

まず簡単に洪水予報についておさらいをしておきましょう。気象庁による洪水予報の概念図が分かりやすいので下に引用しました。洪水予報は河川を特定して発表される水位などの予想で、河川の水位が各基準の水位(「氾濫危険水位」や「避難判断水位」などと呼ばれるもの)に到達しそうな際や実際に到達した際、また、氾濫が発生した際などに発表されます(図上部の表参照)。図の下部分を見ると河川の断面図の中に基準となる水位が示されており、水位の上昇(あるいは下降)に合わせて各種の情報が順次発表されていくことが分かります。

画像を拡大 図1. 指定河川洪水予報の発表基準(上)と水位との対比(下)(出典:気象庁ホームページより https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/flood.html

水位が上がるにつれて上位の情報が発表される形は洪水予報の対象河川全てで共通ですが、「氾濫危険情報は決壊が見込まれる時間帯の○時間前に発表する」といった共通の発表タイミングは設定されていません。流域の広さや地形、土地利用の状況などによって河川の水位が上がるスピードはまちまちであることから、リードタイムは河川ごとに異なります。ある川では「氾濫危険情報」のリードタイムは60分かもしれませんが、別の川では2時間かもしれません。小規模な流域しか持たない中規模河川の場合、氾濫危険情報が出た時にはすでにリードタイムがわずかしかない可能性すらあります。

川ごとにそうした違いがあるため、洪水予報が発表されるタイミングについて裏を取らずに計画に組み込むのは避けたが方が良いというわけです。洪水予報を意思決定に利用する際には、まず対象とする川のリードタイムについて把握する必要があると覚えておきましょう。