工事中の八ッ場ダム。国交省によると左から伸びる配管が「>」の形状に曲がっている地点のあたりまで水を貯められるという

東京都、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、静岡県、長野県の知事で構成する関東地方知事会は18日、今年度定例第2回関東地方知事会議を群馬県高崎市のホテルメトロポリタン高崎で開催した。これに先立ち、同県長野原町にある利根川水系吾妻川の八ッ場ダムの視察を実施。会議では国への提案・要望として東京都が提案した北朝鮮の核・ミサイル対策や静岡県が提案した災害対策などが話し合われ、承認された。

2019年度完成予定の八ッ場ダムは、利根川下流部の洪水被害軽減と利水、発電を目的として1992年に関係機関で基本協定書を締結。その後2009年の民主党政権誕生で当時の前原誠司・国土交通大臣が計画の中止を明言したが、2011年に事業継続を決定。2015年に本体工事を着工した。完成すると高さ116m、有効貯水量は9000万tとなる。

群馬県の大澤知事(左から3人目)を始め知事クラスも視察に訪れた

視察には地元・群馬県の大澤正明知事のほか、茨城県の大井川和彦知事、栃木県の福田富一知事、埼玉県の上田清司知事、山梨県の後藤斎知事、静岡県の川勝平太知事が参加。国土交通省の関係者からダムや工事に関する説明を受けた。視察後の会議の冒頭、群馬県の大澤知事は八ッ場ダムについて「地元の苦悩、そして(利根川流域の)1都5県(東京都、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県)の一致団結があり、ここまできた」と述べた。

会議後、北朝鮮の核・ミサイル対策での提案について説明する小池都知事

会議には全都県の知事が参加。国への提案・要望として東京都の小池百合子知事は国民保護事案に関する対策の推進として、北朝鮮の核・ミサイル対策を提案。国際社会との連携、ミサイル発射や核実験の情報の地方自治体や国民への迅速な提供、国民保護に関する措置の普及啓発のほか、EMP(電磁パルス)攻撃への対策をとるよう求めた。小池知事は「EMP攻撃を受けると、ATMが使えなくなったり空港管制が止まったりなど通信インフラへの影響が大きい。対策は待ったなしだ」と説明。これらの案にサイバー攻撃への対応も加え、国に要望することとなった。会議後の取材に対し小池知事は「Jアラートの(正確な運用)徹底など情報伝達がうまくいくよう国に提案することで(他県知事からの)協力を得た」と述べた。

静岡県の川勝知事は国への要望として、特に最近の土砂災害で被害を増大させている流木対策として流木捕捉機能のある砂防堰(せき)提や治水ダムの整備・改良、流木の発生源となる荒廃森林整備への財政支援を提案。承認された。また、内閣府を中心とした政府の中央防災会議が9月、南海トラフ地震対策において大規模地震対策特別措置法で前提となっている地震の直前予知は現時点で困難と結論。そのうえで新たな防災体制確立に向け国のガイドライン策定を進めるためのモデル地区に静岡県が選ばれたことについて川勝知事は「情報提供を積極的に行っていく」と述べた。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介