画期的!ICT活用の操作支援・不具合対応システム~水資源機構が琵琶湖で初運用~
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2017/10/23
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
「必要は発明の母である」の思いを新たにする最新技術開発の見事な実例を紹介する。このシステムは今年(2017)4月から運用されているが、独立行政法人・水資源機構のみならず、全国でもほとんど導入例のない先駆的ものと評価が高い。システムのひとつは、機械設備の操作支援システムである。AR(拡張現実)技術を用い、画像や音声を用いて操作手順をナビゲーションするとともに、操作の記録も同時に行うことができる。
もう一つは、不具合対応支援システムである。目線カメラ付きのヘルメット型・HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を用い、音声や映像を双方向で通信することにより、遠隔地の専門技術職員と現地の操作者との間で情報のやりとりや的確な指示を行うことが出来る。
これだけの説明では画期的なシステムは理解しにくいと思う。なぜ琵琶湖なのかから紹介したい。琵琶湖は、湖周辺や淀川流域の約1400万人もの暮らしや経済・産業を支える日本最大の湖であり、そこに生息する全ての生物にとっての恵みの湖である。琵琶湖周辺には、大雨などによる沿岸の浸水被害の軽減や内湖の水質保全を目的として設置した18カ所の給排水機場や158カ所ものゲート設備等、多くの洪水・環境対策用の機械設備が配置されている。
2013年9月16日、台風18号襲来の影響により、2日間で琵琶湖水位が102cmも上昇した。水資源機構琵琶湖開発総合管理所(以下、琵琶湖総管)では緊急内水排除に入る重大事となった。琵琶湖総管では、琵琶湖一円に設備が点在していることから、防災業務時には防災班を編制し、琵琶湖周辺の巡視や水門等の操作を職員等が行い、排水機場の運転は、請負業務による運転操作員が行うことしている。だが、この時の大出水では、時間当たりの降雨量が予想を超え、公共交通機関の麻痺や道路冠水による通行止めにより、運転操作員の初期配置が十分確保できない状況となった。このような緊急時では、職種を問わず全ての職員が迅速かつ安全・確実に排水機場を運転操作しなければならない。だが全ての職員に迅速かつ安全・確実な運転操作を期待するのは無理であった。
琵琶湖総管における防災業務はダムの防災業務と比較すると長期間に及ぶことが多く、長期間のポンプ設備運転となると故障や不具合の発生率が高くなってくる。各防災班には様々な職種の職員が配置されているが、専門職については各管内(湖南・湖北・湖西管理所)に1名ずつしか配置できず、故障・不具合発生時は復旧対応に追われることになる。2013年の大洪水対応から2つの課題が浮き彫りとなった。
○ 職種を問わず全ての職員による迅速かつ安全・確実な運転操作
○ 職種を問わず全ての職員による最低限の不具合対応
琵琶湖総管ではICT(情報通信技術)を活用し、2つの職員等支援システムの研究・開発に入った。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/12/05
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/03
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方