小池知事は新・広尾病院での災害時増床について説明した

東京都は8日、「広尾病院整備基本構想」の案の公表とパブリックコメントの募集を発表した。基本構想案では7月にまとめた外部有識者などによる「首都災害医療センター(仮称)基本構想検討委員会」の報告書と意見書の通り、都立広尾病院の渋谷区の現在地での建て替え、災害対応機能の強化として、災害時は通常の倍となる約800床とする方針。臨時増床にも対応できるようあらかじめ壁や天井に医療ガスの配管も行っておく。

都心における基幹災害拠点病院である広尾病院は現在478床だが、2016年度は病床利用率が65.7%にとどまっている経営面の視点も踏まえ、約400床に縮小する。一方で現状210%程度しか使っていない容積率を上限の317%まで活用することから延床面積は増加する。災害時は院内の空いているスペースに簡易ベッドを置き、倍の約800床に増床。簡易ベッドでも重症患者に対応できるよう、普段ベッドのないスペースの壁や天井にあらかじめ酸素や空気、吸引用の医療ガスの配管を行う方針。現在の広尾病院は災害時は増床しても約600床が限界となっている。

ほかにも建物を免震とするほか、災害対策本部向けやトリアージスペース、応援医療チームの参集スペースといった必要な空間確保を行う。テロなどNBC(核・生物・化学)災害対応として専用貯水槽付きのシャワー施設を整備。現行と同等の屋上ヘリポートを整備する。外傷センターを設置し、これまで外科、整形外科、形成外科、脳神経外科が別々に提供していた外傷医療を平時から連携し一体的に提供。災害時の重傷患者の激増に備えておく。

都ではパブリックコメントを11日から10月10日まで募集。その後に基本構想を正式に決定し、11月以降に基本計画の検討に着手する。広尾病院は1980年に竣工。老朽化や首都直下地震への備えのために建て替えることとなり、2015年に閉館の同じ渋谷区青山にある「こどもの城」の土地に移転する方向で、2016年度予算に同国有地購入費用370億円が計上された。しかし経緯が不透明だとして、2016年12月に小池百合子知事が白紙の意向を示し、予算執行も停止された。基本計画で当初は2023年度に予定していた開設の新たなスケジュールのほか、災害時増床にどの程度ガス管を対応させるかなど細かな内容も決める。

小池知事は8日の記者会見で、「ベッド数の減少や整備手法の工夫など病院整備の前提を見直したことで、現地建て替えが可能になった。(移転の決定を)一旦立ち止まって見直した結果だ。公営病院としての役割をはしっかり果たす環境を整えられた」と説明した。今後、併設している看護学校や職務住宅といった病院機能のない施設の土地に、病院の移転を進めていくローリング方式で行う見込み。建て替え期間中は病院機能も縮小せざるをえないが、周辺病院との連携も行い対応する。

■ニュースリリースはこちら
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2017/09/08/01.html

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(了)