困難な庫内の消火

ゴミ収集車(塵芥車、パッカー車)の火災は、発火した部分、内容物、天候、火災発生場所、周辺の水利などによっても大きく変わってくる。

海外の事例では、火災を覚知した場合は可能な限り、庫内の全てのゴミを路面に広げて、可能であれば撮影して、火源を素早く特定し、すぐに消火するようだが、満杯状態の時に燃えて消火したゴミは水を含んで重く、鎮火後の大量なゴミを人の手によって拾い上げるのは大変な時間と労力が必要になる。

また、燃えたゴミ収集車にゴミを戻すことができないため、代替車でゴミを清掃工場まで持っていく必要がある。

過去の消火事例では、清掃車のローラーなどを動かすための電気系統、油圧配管が燃えてしまって開放できず、庫内への直接的な放水ができなかったことから、清掃車のボディーをエンジンカッターで開放し、消火した事例もある。

よく塵芥車の庫内で発生した火災に対して、粉末消火器を使おうとする人がいるが、庫内に取り込まれた圧縮された立体のゴミの火災に対してはほとんど効果がないと思われる。

その理由は、粉末であるため、燃焼ゴミの外側部分には効果があったとしても、ゴミの内側の燃えている部分は消火できないから。一瞬、初期消火に成功したかのように見えるが、実はくすぶっていて、やがて酸素の流入によって再燃してしまうのだ。

(出典:YouTube/【nite-ps】カセットボンベ「1.ごみ収集車で発火」(独)製品評価技術基盤機構)

では、どのような対策が考えられるか? もし可能であれば、アナログ的な方法ではあるが、庫内で発生した火災の初期消火用に直径65ミリの20メートル消防ホース1本、消火栓のふたを開けるT型バール1本、スタンドパイプを積載し、車体ボディー(左側、舗道側)に送水口(65ミリ)を付け、庫内上部を囲むように乾式スプリンクラー(配管と注水ヘッド)を付ける。火災が発生した場合には、下記の手順でゴミを路面に広げることなく初期消火、または消防隊到着までの燃焼拡大防止ができるかもしれない。

すでに火炎と黒煙が噴き上がり、爆発燃焼している場合は、消防隊到着まで送水口庫内を冷却しながら、酸素流入を最小限にして待つこともできるかもしれない。