ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
もっと本気の消防行政を実現するために
先進諸国の消防が取り組む「クロススキル」
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
サニー カミヤ の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
約15年ほど前から、先進諸国の消防局が取り組んでいるのが「クロススキル」。「救急・救助・消火」など、どの消防現場にでも対応できるよう常備・非常備の消防職員に対してクロススキルを身につけさせ、継続教育を行っている。
クロススキルとは、例えば「パラメディック」「サーチ&レスキュー」「ファイアーファイティング」のトレーニングを年間最低2週間ずつ受けさせ、どの現場でも必要資機材を選択して、消防活動を行うことができるスキルのこと。現場活動の合理性はもちろん、もし人事異動があっても、次の職場で何事もなく任務を果たすことができる。
日本でも17年ほど前から、救急出場時に救急現場に近い消防署・出張所から消防車と救急車を同時に出場させ、救急隊員に限らず、消防士を救命処置や救急隊の活動支援等に当たらせる、いわゆる「PA連携」がスタートしている。しかし現場活動機会が増えたように見えるが、大都市の消防本部では今でも心肺蘇生法がうまくできなかったり、AEDを使えない消防士までいるのが現状だ。また、消防団よりも救急講習が下手な消防士達もたくさんいる。どうしてなのか?
(出典:「EMS & Emergency medicine tribute.」/Youtube)
私は日本とアメリカで救急隊員を経験したが、大きな違いは、アメリカを始め、多くの国々でボランティアの救急隊(日本語で表現すると「救急団」と「救急団員」)が存在し、日本の消防団員と同じように普段は会社員ながら、指令を受けて救急出動する。また、ボランティアのパラメディックなどの継続教育トレーニングも、常備のパラメディックと同じ条件で受け、2年に一度はライセンスを更新し、活躍していること。
ビデオを見て、彼らの「命に対しての本気の消防活動」に感動し、純粋になった心で日本の消防行政を思い浮かべてみると。。
今ではネット上で、さまざまな総務省消防庁の救急に関する検討会資料や作業部会のPDF資料を閲覧できる。辛口な意見だとは思うが、各部会のメンバーの人選や議論の内容を読んでいくと、体裁は整えているが、この議論している方々のほとんどは消防現場で活動したことがほとんどないか、階級や立場で話していて、何を検討しているのか趣旨を理解していないのではないか?と感じる内容のものが多い。
また、「万が一」をあまりにも必要以上に心配して「九千九百九九」を選択しなかったり、エビデンスのはっきりしない欧米の統計資料(欧米ってどこの国?)を引用したり、少数の強く極端な意見に多数の良心的な常識のある意見が負けたりするなど、何かおかしな現象で消防行政が動いているのも読めてとれる。
皆さんも「総務省消防庁 検討会 PDF」で検索してみると、各メンバーの誰が何を考えていて、どこまで知っていて、どれだけエビデンスベースの資料を準備し、どの程度のことを話しているかがよくわかるだろう。さらに関心がある方は、検索内容に2017などの年号を入れると興味深い段階的な内容を知ることができる。
これから、これらの検討会のメンバーになる方々は、このようにPDFで将来に議事録が残り続けることを覚悟して、議論したほうがいいと思う。明らかに失言と捉えられる記載のある過去の検討会資料もかなりあるし、失言の訂正や削除することはできない。
さて、下のビデオを見ていただきたい。
(出典:「EMT & Paramedic Training at First Response」/Youtube)
アメリカの消防は9割方がボランティアで成り立っているが、その理由や経緯などの理屈はともかく、彼らの純粋な活動を見て、常備、非常備に限らず、命を助けることに対して、消防士としてでなく人としてどれだけ本気になれるか、また、できることを最大限行うことの勇気と責任を感じる。
ボランティアの消防団員は異動がないため、人にもよるがプロ意識が高いとも感じることもある。日本は昔から、数年おきの人事異動によって部署が変わるため、すべての行政にプロがおらず、成長しない体制にあることは問題になっている。特に消防行政の場合、それぞれの業務のプロを育て続けることは、特に人命を救急救助し続けることであることは明確だ。予算や個人装備など、維持費がかからず、適切なものに対してはもっと優先されるべきだと思う。
(出典:「A Day In The Life of an EMT」/Youtube)
予算と言えば、予算のシステムについて、簡単に変更できないという理由(?)で、何も改善努力も行う人もいないのが現状だ。
もっと素直に、本当に必要な装備を選択して予算を有効に使い、余剰予算を無理して使うことなく、次年度へプールできて、さらに次年度の予算削減などに至ることがないようなシステムが必要であり、国民に対する責任だと思う。
また、10年に1度しか出動しない消防車両に数億円も出して、毎年メンテナンス費用がかかり続けるような、お粗末というか、メディアや国民が知ったら、大きな社会問題になるような予算の使い方は、もうやめた方がいいと思う。
また、明らかに無駄な予算を使ったと「消防予算適正化委員会」等で判断された場合、その予算に関わった担当者は処分されるべきで、予算が適切に使われたかを審査する機構も必要だと思う。
特に消防行政は「本気で国民の生命・身体・財産を守りたい」と強い志気を持ち、昇任の為の途中通過駅的な仕事やシステムは、改善されるべきだと強く感じる。
今回の内容は救急から予算の話題になり、少し消防行政批判的な内容になったかも知れないが、最近、全国の多くの若い消防職員にワークショップを行ったり、懇親会をしていて強く感じることは、幹部の改善意識が低いことと「どうせ、上に何を言ってもかわらない」と古い慣習的なシステムが若い本気の職員達の志気の障害になっていること。
特に救急隊員の方々は日々の消防業務で、一番出動回数も多く、自分本位な負傷者の対応等にも我慢して応じたり、メンタル的ストレスは大変なものだと思う。
救助隊員も47年間も同じ内容で続いている救助技術大会の意味に疑問を感じながらも毎年、年間の大半を費やしている。
改善した方がいいことは山ほどあるのになかなか進まない理由はみんな知っていると思うが、現職の消防職員では言いづらく、我慢して毎日の業務にあたるのは良くない気がする。
この記事が発端となって、感情的ではなく、もっと落ち着いた状態で消防行政に携わる誰かが本気で改善に向けて動き出したり、具体的な対策をとるきっかけになればと思っている。
まとまりのない高飛車な内容になってしまったが、「たまにはこんなストレートな内容も真剣な議論になってもいいのではないか」と心から感じる。
(了)
一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp
info@irescue.jp
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方