2017/07/13
防災・危機管理ニュース

文部科学省を中心とした地震調査研究推進本部は2612日、「海域観測に関する検討ワーキンググループ」の第67回会合を開催。「次期ケーブル式海底地震・津波観測システムのあり方について」と題した中間とりまとめ案を示した。高知県沖から日向灘にかけての南海トラフ西側の海域観測システムについて3つの案が盛り込まれたが、この中からどれを採用するかは今後検討するという内容とした。
3つの案は1.インライン・ノードハイブリッド方式2.インライン・ノード分離方式(全域一体型)3.インライン・ノード分離方式(領域分割型)。インライン方式は地震計や津波計といった観測機器を直接光海底ケーブルにつなぐ方式。ノード方式は光海底ケーブルをループ状に設置し、ノードと呼ばれる水中脱着コネクターを備えた中継装置に各種計器をつなぐ。ノード方式は計器の組み合わせの自由度が高いのが特徴。
インライン・ノードハイブリッド方式は両方式を複合したもので、インライン方式からノード方式を分岐させる。空間的に均一な観測網を構築しやすく、整備も効率的に行いやすいと評価。一方で未知のやり方で新規開発の要素が大きいという。
インライン・ノード分離方式のうち全域一体型はインライン方式を全域に敷設し、ノード方式を必要な箇所に敷設する。領域分割型はインライン方式を浅部と深部に、ノード方式を中間部に敷設する。どちらのタイプも既存の方式のアップデートで新規開発の要素は少ないが、インライン方式とノード方式の異なる2方式を整備・運用することになる。
南海トラフ西側の次期システムが整備された後は、防災科学技術研究所が海底地震・津波観測網の一元的な管理運営を行う。とりまとめ案ではさらに、南海トラフ地震の内閣府による被害想定では最悪約32万人の死者が出ると予想していることから、早急な整備を進めるべきとしている。
委員からは「新規開発の要素という表現があるが、もっとフラットな視点を持った方がいいのでは」といった意見が出された。中間とりまとめではこの3つの案を次期システムの選択肢として示し、どれが早期の事業着手やライフサイクルコスト低減が可能か検討の材料とする。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
※当初の記載に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。
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