写真:アフロ

新型コロナウイルス感染拡大への対応で困難な状況にある日本社会において、医療と経済の双方を守る危機管理のあり方が求められている。前回、前々回に続き、6 人の危機管理分野のエキスパートによる緊急座談会を紹介する。

参加者は、日本大学危機管理学部の河本志朗教授、名古屋工業大学の渡辺研司教授、防衛医科大学校の秋冨慎司准教授、日本政策投資銀行の蛭間芳樹氏、日本防災デザインの熊丸由布治氏、重松製作所の濱田昌彦氏。司会はリスク対策.com 編集長の中澤幸介。

本記事は、BCPリーダーズ5月号に掲載した内容を連載で紹介していきます。
https://bcp.official.ec/items/28726465

リソース不足を経済戦略につなげる

中澤 各企業や各医療現場で、今後何をしていかなければいけないのか。秋冨先生の立場で、まず医療崩壊を避けなければならない事態に対する課題は。

秋冨 人的・物的リソースが足りない場合、一元化した危機管理をしないといけない。何でもかんでも自衛隊任せではだめだ。

中澤 医療の現場と経済でそれぞれの危機感、枯渇感を共有し、不足しているものをマッチングすることで解決できることも。かつて建設業は、公共事業の削減や入札制度改革などにより受注量が激減し、省庁が連携した新分野進出支援が行われた。渡辺先生、その辺りについての考えは。

渡辺 新潟中越・中越沖地震では、被災した地元業者が連携して避難者やライフライン企業に弁当を提供し、その費用は行政が出すという地産地消のサイクルによって、地域の経済・雇用を少しでも早く回し始めるという取り組みがあった。現場では需要があるわけで、観光客やビジネス客の需要がなくなった供給側をマッチングすればサイクルが回り出す。
その地域でしか分からない話で、霞ヶ関には分からないところもある。自治体や出先である各省庁の地方局が対応できればいいが。

秋冨 国民や現場のニーズを収集して、計画立案ができる組織が必要だ。民間の意見もきちんと吸い上げて、官民共同プラットフォームのようなものを作る。
今は民間にはいろんなアイデアがたくさんあるが、それが生かし切れていない。今回の新型コロナ対応で必要なことを、機能として書き出せれば、すべて自衛隊
ということにはならず、民間で対応できることも割り振りができる。今回、COVID-19用に、22のESF(エマージェンシー・サポート・ファンクション)からなる「ESF for COVID-19」を作った。未知のことなので、全てを網羅するようなかたちで作った(表:ESF for COVID-19)。
これらをマネジメントする組織の下に、セクション、チームとしてぶら下げたらよいのではないか。