海水淡水化で水飢饉を救う
離島に水資源機構が出動
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
2017/06/26
安心、それが最大の敵だ
高崎 哲郎
1948年、栃木県生まれ、NHK政治記者などを経て帝京大学教授(マスコミ論、時事英語)となる。この間、自然災害(水害・土石流・津波など)のノンフィクションや人物評伝等を刊行、著作数は30冊にのぼる。うち3冊が英訳された。東工大、東北大などの非常勤講師を務め、明治期以降の優れた土木技師の人生哲学を講義し、各地で講演を行う。現在は著述に専念。
水がなければ人は生きていけない。とりわけ自然災害時に求められるものはライフラインの確保、なかでも水の確保である。同時に、そのための英知である。「私たちは異常渇水時、地震・水害等の災害時においても『安全で良質な水』を利水者の皆様にお届けする責務を有しています。その責務を果たす手段として、多様で機動的な水供給手法の一つとして有効である、原水(海水を含む)を飲料水に浄水させる可搬式浄水装置を保有しています。現在、給水支援や操作訓練等の経験を積みながら、機構職員自ら運用できる体制の整備や問題点の抽出・整理を行っています」。独立行政法人・水資源機構のホームページはこう宣言する。その実践例を見てみよう。
世界遺産に登録された東京都の離島・小笠原村の父島では、2016年秋以降深刻な水不足に見舞われて来た。昨年から小雨傾向が続いており、父島の水源である各ダムの総貯水率は2月13日現在で35.1%まで低下した。同島では、緊急の渇水対策として2016年10月から公共施設のシャワーを停止し、1 月23日から減圧給水を実施している。2月13日からは小笠原村所有の可搬式浄水装置の稼働を開始するとともに、村民や来島者へ節水の呼びかけを行った。その後に降雨がなければ水道水源が枯渇する恐れすら出てきた。
小笠原村から要請を受けた水資源機構では、父島に大型の可搬式浄水装置を送り込み、同機構職員による現地での技術指導を行った。可搬式浄水装置は、海水を淡水化して飲用にできる新技術の装置であり、これまでも全国各地での災害支援で活躍した実績を誇っている(父島では2011年の大渇水に続き2度目の給水支援である)。
技術支援を行うのは職員3人で、2月16日に船に乗り込み約1000km南の同島に向かった。翌17~20日までの4日間、小笠原村において同機構の可搬式浄水装置を運転させ技術指導も行った。その後は、村が単独で装置を運転し給水活動を続けた。
同機構の可搬式浄水装置は、日量約50m3(家庭における通常の使用水量で200人分。緊急時の飲料水にして約1万6000人分)の給水が可能であり、同装置の導入により、村は深刻な水不足から脱出することが出来た。<付記>東京都小笠原村父島の概要:東京から南に約1000km、面積は23.45km2。人口 は約2000 人。
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