ふじのくに津波対策アクションプログラム 
短期対策については、2011年9月に「ふじのくに津波対策アクションプログラム(短期対策編)」として、「津波を防ぐ」「津波に備える」「津波から逃げる」の3つの観点から26のアクションにとりまとめ、実施可能な対策から着々と実施してきた(図1)。 

具体的には、市町と連携し、防潮堤の整備、津波避難計画の策定、津波避難ビルの確保、津波避難タワーの整備などに取り組んでいる。すでに避難場所の確保や避難路の確保・整備についての取り組みは著しく進んでいるという。東日本大震災前に508棟だった津波避難ビルは2013年3月には1200棟以上、高台は120カ所以上、海抜表示は1699カ所から1万カ所以上になるなど大幅に増加した。また、津波に対する住民の意識啓発や的確な情報伝達といったソフト面の強化にも力を入れ、2012年度には県内で131回に及ぶ訓練を実施した。 

津波対策アクションプログラム(短期対策編)の取り組みと成果について、静岡県危機管理部の藤原和夫理事は「短期対策により『量の対策』は充実してきた。次の課題は、ハード・ソフトの対策を組み合わせ、多重防御によるまちづくりを進めること。今後は、津波の到達時間が短いという本県の特性を踏まえ、より一層安全度の向上を図るため、『量』だけでなく『質』を高める対策が重要となる」と話す。

一方、中長期対策としては、国による南海トラフ巨大地震の被害想定との整合を図った、県が策定する第4次地震被害想定に合わせて、住宅の耐震化の促進、津波対策施設の強化、津波避難計画の見直しなどを行う。これらの対策を「地震・津波アクションプログラム2013(仮称)」としてまとめ、減災に向けた取り組みを強化する予定としている。

内陸フロンティア構想 
静岡県の取り組みは、沿岸部を中心とした従来の減災・防災の強化だけに留まらない。「内陸フロンティア」という言葉をキーワードに、県・市町が連携して防災・減災と地域成長を両立させる新しい地域づくりを目指している。 

これまで静岡県では、全国トップクラスの「ものづくり」を通じて、日本の沿岸部を中心に経済成長を支えてきた。しかし、東日本大震災をきっかけに、沿岸部への津波被害への懸念が高まったことで、事業の継続性を重視する企業が県外へ移転を余儀なくされるなどの動きが見られた。 

こうした地域の危機意識の高まりを背景に、従来の防災・減災の観点だけでなく、地域活性化を最大原に目指す「内陸フロンティア」構想が生まれた。