Schuyler Hose Firefighter Survival Training 2017 (出典:Youtube)

私がレスキュー隊現役時代、救助年間訓練計画の一部ですが定期的に、 下記のような救助救急訓練を行ってきました。

・火災現場で仲間が何らかの原因で倒れたり負傷して自力脱出できなくなった際の緊急救出法(RIT:Rapid Intervention Training)訓練

・水難救助活動時に潜水ボンベのエアー切れ、見失った仲間、釣り針やワイヤーの絡み出身動きがとれなくなった際の捜索、救助、救急法

・山林火災や山岳救助時のヘリや徒手搬送による救助、救急、搬送法

・土砂崩れで生き埋めになった消防士の救出法

・マンホール等の低所からの救出、高圧線等の高所からの救出、その他あらゆる工事現場関連事故における救助現場で消防士の2次災害が発生した際の救助、救急法



Schuyler Hose Firefighter Survival Training 2017 (出典:Youtube)

ただ、上のどの訓練も動画として残っていないため、数々の具体的な手法や装備、ピンポイントなコツ、ケースごとの部隊フォーメーションなど、各活動上のレスキューコンセプトを後輩隊員達へわかりやすく伝えるのに時間が掛かりました。

検討したい改善事項も、映像であれば巻き戻してピンポイントに再生しながら、問題点を共通認識の元に話し合ったり、工夫できたりしますが、文書などの文字で説明されたり、口頭で説明されたりしても非常にわかりづらく、誤認識もあり、指導者と隊員の余計なストレスを生む要因にもなることも感じていました。

以前、「FireFighter CPR」と「メーデーの発信要領」をご紹介しましたが、今回はRIT訓練(消防活動現場で仲間が倒れたときの救助法)の中から、アメリカの多くの消防署で定期的に行われている火災時における具体的手法をご紹介します。

■米国で開発された、消防士による消防士のための「FD(Firefighter Down)-CPR」もし、現場で仲間の隊員が心肺停止に陥ったらどうする?
http://www.risktaisaku.com/articles/-/1831

■いつ、だれが、何の「メーデー」を発するのか?その発信責任は?
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2098

まず、日本でこれらの緊急救出法(RIT:Rapid Intervention Training)訓練を行うには、署内にある既存のさまざまな救助訓練施設などを利用し、手作りで進入や退出の困難性を調整できるよう工夫されることをおすすめいたします。

もし、既存の訓練施設の改造等ができない場合は、古タイヤや中古の跳び箱、事務机や椅子、そのほか産業廃棄物業者から配線や廃材などを安価で集めてくることで、非常に簡単に作ることができると思います。

下記のビデオをご覧ください。どんな障害物をどのような部材で作っているか?また、コースの長さや規模も観察しながらビデオを見ていただけると参考になると思います。



Mayday Obstacle Course (出典:Youtube)

このRIT訓練施設はアメリカの一般的な火災現場を想定していますので、日本の実際の火災現場とは異なるかもしれません。コンセプトはいかに空気呼吸器のエアーの消費を抑えながら、バディーで助けに向かい、要領よく安全に救助・救出・救急活動を行うか?がポイントとなります。

ユニークなのは、「エンジェルボイス」といって、隊員がどうしても障がいを突破できない場合は、指導員が上からヒントを教えてくれることです。このアドバイスが頭に残ることで実際の現場で助かったという隊員も多いです。

下記のビデオでは要救助隊員発見時の呼びかけ、意識の確認、残圧チェック、空気呼吸器の故障などを6秒以内にチェックしています。



RIT Packaging and HALO Drag Quick Drill(出典:Youtube)

以下、RIT訓練の準備装備、手順、評価ポイント、加点式訓練内容です。

RIT訓練の準備装備

・訓練隊員人数:2〜5名
(計測員、安全管理者、評価員、ビデオ撮影員など兼務することも可能。特にエア切れに注意。ただし、エアのなくなるギリギリまで訓練継続する)

・フル装備

・呼吸器:人数分プラス、予備2器

・予備ボンベ:人数分プラス予備2本

・面体カバー

・ロープ:30mx2本

・ホース:50mmホース2本

・訓練評価表(加点式)

・小綱またはウェビング:人数分

・酸素吸入セット

・携行ライト

・補給水

など


いかがでしたか?

なぜ、アメリカで各種災害時のRIT訓練を数多く行うかというと、結果的に要救助者救出時の訓練にも繋がり、また各隊員の体力・能力をチェックする機会にもなり、さらに隊員自身が自分の弱点を知り、個人的に強化する指標ができるからです。

日本全国の多くの若い消防士の方々から、組織の大小に関係なく「私が所属する消防本部はとても閉鎖的で、上司たちは新しい訓練やアイデアなど、受け入れることなく否定します。なのでやる気のある仲間とプライベートでの自主勉強会や訓練会で新しい知識や技術を得るようにしています」と聴きます。

できれば実際に現場で使う装備を使って訓練されることをおすすめいたしますが、難しい場合は仲間とシャドートレーニングでも行っておくことで、実際の現場で役立つと思います。

いずれは世代交代の時期ですので、どうぞ少しずつ、既成事実を作りながら新しい消防環境を構築されて下さい。

それでは、また。


もし、アメリカのRIT訓練などの実技講習をご希望の方は全国出張いたしますので、ご興味がございましたら、下記までご連絡下さい。

一般社団法人 日本防災教育訓練センター
http://irescue.jp
info@irescue.jp