■日系企業の環境違反処罰件数の割合が急増

以前より口酸っぱく言い続けている「中国に進出している日系企業の環境政策対応の鈍さ」について、今回は資料を元に現状を解説します。まず下の図表をご覧ください。これは上海市における中国企業を含めた全企業の環境違反の数の推移を表した図表です。

写真を拡大 上海市政府発表「環境法執行月報」のデータに基づき筆者統計

これによると、2017年をピークに処罰案件数は減少、ただし罰金額の総額は増加傾向にあります。次に、処罰案件数のなかから日系企業だけの数字を抽出し、その割合を重ねてみましょう。違反処罰案件数の全体数の減少に反して、日系企業の処罰件数の割合が増加していることがわかります。

写真を拡大 2015年7月より上海市政府により公開されている「毎月の違法企業リスト」から筆者統計

つまりこれは、日系企業の取り組みがローカル企業の取り組みよりも遅れている事実をあらわしているのです。

続いて、上海市に進出している外国資本の企業との比較を行ってみましょう。ちなみに2017年11月の統計データによれば、上海市に進出済みの日系企業数は1万43社、外資企業は4.76万社であることから、日系企業が全体に占める割合は21.1%です。下の表を見る限り、けっして日系企業だけが取り締まりの標的になっているわけではありません。

写真を拡大 上海市生態環境局の公式サイトのデータにもとづいて筆者集計・作成

中国環境の事情通と言われる方が「中国政府は政治的に日系企業を集中的に処罰している」という話をよくされますが、けっしてそんなことはないことがわかるでしょう。日系企業の責任者の方も、口癖として「中国政府は突然やってきていきなり処罰を下す」「政府は前触れもなく法律や基準を改定し、いきなり処罰する」などと言われるのですが、果たしてそうでしょうか?