2017/05/17
ランサムウェアと最新セキュリティ情報

独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)サイバーレスキュー隊(J-CRAT)の副隊長を務めております伊東宏明です。J-CRATは標的型サイバー特別相談窓口を設けて公的機関や業界団体、重要産業組織、重要インフラ事業者、一般企業などからの相談を広く受け付け、助言による支援をしています。本日は1.標的型サイバー攻撃への取り組みと実例2.標的型攻撃メールの見分け方3.添付ファイルの見分け方4.標的型攻撃メールを見つけたらーについて話します。
IPAは2006年から毎年、サイバーセキュリティの専門家からアンケートを取って「情報セキュリティ10大脅威」を発表しています。2016年からは「個人」向けと「組織」向けに分けたランキングを発表しています。最新版の2017年版組織ランキングを見ると1位は標的型攻撃による情報流出、2位はデータにロックをかけて金銭を要求するランサムウェアの被害、3位はウェブサービスからの個人情報の窃取、4位はサービス妨害攻撃によるサービスの停止、5位が内部不正による情報漏えいとそれに伴う業務停止になっています。大きな変化は、昨年は7位だったランサムウェアが2位に上昇したことです。

組織が現在最も脅威を感じている標的型攻撃は古くは2005年に報告があります。2011年には国防にも関わる企業などが攻撃を受けて、大きく報道されました。J-CRATが2014年に発足する遠因にもなった出来事です。2015年にJ-CRATに寄せられた標的型攻撃の相談件数は537、支援件数は160。それまでは共に増加していましたが、2016年度はやや減っています。
2014年4月から2015年3月の1年間に送られた標的型攻撃メールを調べるとフリーアドレスと企業、公的機関のアドレスを乗っ取ったメールが混在していました。ウイルスが添付されているほとんどのファイルは圧縮され、その割合は提供されたメール全体の60%。非圧縮の添付ファイル付きメールは27%。その他URLリンク付きなど添付ファイルの無いものが、13%でした。圧縮タイプの主流は「.zip」、続いて「.rar」になります。最近は「.LZH」という圧縮形式もやや増えています。他にも「.7z」「.arj」「.gz」「.cab」がまれに見られます。
ファイルの中身は実行ファイルの「.exe」が48%。オフィスの脆弱性を使うのが23%。巧妙に騙して「.exe」ファイルをクリックさせるのが主流です。最近はリンク「.lnk」を使ったものも増え始めていて、それがもう一つの主流になる可能性があります。

- keyword
- ランサムウェア
- サイバー攻撃
- サイバーセキュリティ
ランサムウェアと最新セキュリティ情報の他の記事
おすすめ記事
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方