2020/04/03
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
自宅待機命令中、飲み会で新型コロナに感染した場合

歓送迎会の季節でもあるし、旧友が転勤してきたなど、たまった疲れを晴らすためにも出かけたい気分になる時期でもあります。もし、会社が自宅待機命令を出しているのに、繁華街に出掛けて感染した場合はどうなるのでしょうか?
こちらについては、関東弁護士会連合会 副理事長 丸の内総合法律事務所の弁護士、中野明安氏の「新型コロナウイルスの感染拡大に備えた企業の対応」
https://www.e-sanro.net/share/pdf/news/covid2003.pdf
から抜粋してお答えします。
結論として、会社からの懲戒処分はあり得ます。
「自宅待機」の命令(勧告)は強制力のある業務命令ではありません。そのため、業務命令違反にはならないと考えられます。しかし従業員は労働契約上の付随義務として、私生活においても労務の提供に支障が生じないよう注意すべき義務があります。
そのため、 新型コロナウイルスの流行期に、労務の提供に支障が生じないように健康保持に注意すべき義務があると考えられるのに、繁華街に繰り出し感染した場合は、この健康保持義務に違反して会社に損害を与えたと判断される余地があるのです。
とはいえ、健康保持義務違反があっても、就業規則に懲戒権行使の根拠規定がなければ懲戒処分はありません。逆に「故意または過失により会社に損害を与えたこと」などの懲戒事由が定められている場合には、懲戒事由になるでしょう。
もし懲戒事由規定がない場合は、会社としては速やかに定めておくことも、今後の対策として重要です。
そのほか会社としては念のため、就業規則上においても就業時間の内外を問わず、会社の行う安全衛生・保健衛生の 措置および指示に従うべきとの定めをするとともに、新型コロナウイルスの感染予防のための留意事項を改めて指示し、従業員に対して周知徹底しておくことが重要とのことです。
企業の社会的責任を考えると、従業員と一緒に今後の対応を考える必要がありそうですね。
中野明安氏の「新型コロナウイルスの感染拡大に備えた企業の対応」には、感染者が出た場合の企業の情報公開の対応の方法などが書いてありますので、企業関係の方は、ご確認することをおすすめします。
電気、ガス、水道が限られた期間で止まる災害時と比べ、電気・ガス・水道は使えるけれど、長期にわたりさまざまな制約が考えられる今後は、新たな対応が必要になってきます。社員のニーズに柔軟に対応することが、新型コロナウイルス感染拡大後の世界に対応した事業展開にもつながりますので、大変な今ですが、乗り越えていきましょう。
リスク対策.conでは、中野安明弁護士が企業の新型コロナウイルス対策を解説するオンライン講座「新型肺炎への企業の法的対策のポイント」を開設しました。
詳細・お申し込みは https://www.risktaisaku.com/articles/-/24976 まで。
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