なぜ警察犬がいて消防犬がいないのか?
世界の災害現場で活躍する犬たち
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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近年、雪山に限らず、また山の高さにかかわらず、春も夏も遭難事故や転落事故などが起こり続けています。特に最近は、アウトドア系スポーツや登山者の数が年々増えていることから、消防署員や団員が山岳救助活動に出動する件数が増えると予測できます。
■山岳白書:平成27年中の北アルプス登山者と遭難事故のまとめ(岐阜県北アルプス山岳遭難対策協議会)
https://www.kitaalpsgifu.jp/image/h27hakusyo.pdf
この記事を書くに当たって日本における山岳救助のニュース映像をかなり見たのですが、救助する犬が出てきたところを見たことがありません。海外では、2000m以下くらいの山で起こったハイキング中の滑落事故やヘリコプターでの救助活動には、救助犬が活躍している映像がとても多いのです。
また、警察は警察犬を活用して、様々な捜査活動や犯人の抑制などを行っていると思いますが、なぜ、消防には消防犬がいないのでしょうか?
以前から、災害指令を受けて、消防隊と一緒にすぐに出動できる消防犬がいても良さそうな気がしたのですが、いかがでしょうか?
日本における消防犬が活躍できる可能性について:
・あらゆる災害時での要救助者の捜索
・雪山等寒冷地災害時での要救助者の保温や心の支え
・大地震による倒壊事故、土砂崩れなどでの要救助者の場所の特定や励まし
・水難救助での要救助者の救助や曳航など
・火災予防広報活動や防災教育など
・被災者や家族の急性ストレス緩和、パニック予防
・動物救助(誘導、犬による犬の救助など)
・閉所に閉じ込められた要救助者に犬を進入させて状況撮影
すでに世界の各国で上記の目的で働いている犬のビデオをご紹介します。
1、雪山遭難救助犬
Colorado's Mountain Rescue Dog Squad(出典:YouTube)
特にスキーヤーやスノーボーダーの迷子のコースアウト客捜索、滑落者、雪崩出生き埋めになった要救助者の救出で活躍しています。冬以外にも、真夏のハイキング客の行方不明者捜索、山に迷った人の誘導なども行っているようです。
2、水難救助犬
Super Swimmer Dogs Save Lives: SUPERPOWER DOGS(出典:YouTube)
川に流されている犬や人の救助に犬を使ったり、ヘリコプターから飛び込んでの海で溺れている人の救助、海岸からの救助、流されていくボートの曳航や誘導など、活動は様々です。
3、子供たちの心を開き硬くなった心を和らげる犬
World's Smallest Working Dog: SUPERPOWER DOGS(出典:YouTube)
一般的にセラピードッグとして認定&登録している犬だが、被災した子供や家族、悲しみの心を開いてくれるような仕事をしてくれる。
4、火災予防広報で活躍する犬
Stop, Drop, and Roll & Get Low and Go!(出典:YouTube)
子供たちの気を引きつけ、一緒に遊びながら衣服に着火したときの消し方や地震の際にどうするか?火災の煙に巻かれたときには?など、最初に犬がデモンストレーションし、子供達にそのまねをしながら体で覚えてもらうなどの仕事をしています。
5、消防救助犬
Search and Rescue Dogs | American Dog With Victoria Stilwell(出典:YouTube)
土砂崩れ、水害での孤立、大地震による倒壊建物による生き埋め時に短時間で足場の悪い広範囲の捜索と要救助者の発見、進入ルートの誘導などを容易に見つけてくれる働きをする。
6、災害時捜索救助犬トレーニングセンター
SearchDogFoundation National Training Center (出典:YouTube)
そして、アメリカで唯一、あらゆる災害ケースを想定して訓練を行うことができる、災害救助犬トレーニングセンター。毎年、全米から70組くらいの各種災害救助犬とハンドラーがここでトレーニングを行っているそうです。
■SearchDogFoundation
https://searchdogfoundation.org
いかがでしたか?
犬は人間が持っていない災害対応能力を十分に持っていると思います。もちろん、犬のハンドラーや災害対応能力を向上させる継続的なトレーニングは必要ですが、これからさらに自然災害が増え続ける可能性のある日本の災害特性下において、また、山岳部や雪山、自然の多いエリアが管轄内にある消防署で、消防犬の採用を検討されてみてはいかがでしょうか?
■災害救助犬のトレーニングマニュアル
http://www.duckhillkennels.com/libraries/PDFs/TrainingDisasterSearchDogs.pdf
同時に、やはり山にかなり詳しくないと、いくら体力のある消防士でも活動にかなりの困難を要するため、下記のようなセンターでの基本的な研修を定期的に受けられても良さそうな気がする。
■長野県山岳総合センター
http://www.sangakusogocenter.com/
これからも災害特性が変化していくと思いますが、近年の気象事情から自然災害、特に大水害と山岳事故は、さらに増えると言われています。
東京で行われている様々な災害関係の研修会などでお会いする若手の消防関係者からは、ほとんどの日本の消防本部では、新しいトレーニングを考えて実行したり、訓練システムや仕組みを考案したり、手法を変えたりということは簡単ではなく、なかなか着手しないそうです。
また、海外で学んできたことを紹介しても、いきなり、否定から入るか?変えなければいけない理由をさんざん聞かれた挙げ句、できない理由を並べ立てられて、結局何もしないなど。やる気のある人材は損気きさせられることがほとんどなので、せっかく研究熱心な若手消防職員が伸び悩んでいると聞きます。
もちろん、海外で行われていることが良いことばかりでもありません。それでも、もし若手隊員が何か新しい技術やアイデアを持ってきたときには、まずは、受け入れて、興味深く聞き、そして、可能な範囲で隊が一緒になって訓練に取り入れたりすることはできないだろうか?と心から思います。
それでは、また。
(了)
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