今回は「水痘と帯状疱疹(ほうしん)」を取り上げます。この2つは同じウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)が原因で起こる病気ですが、症状が異なります。水痘帯状疱疹ウイルスの初感染では水痘を発症しますが、水痘が治癒した後もウイルスは神経節(特に脊髄後根神経節)に遺伝子の形で潜伏します。そして宿主の加齢や免疫低下に伴って再活性化し、神経の支配領域に限局して症状を起こします。これが帯状疱疹です。
I.水痘
1.水痘の特徴
症状
水痘ウイルスはヘルペス属に含まれるウイルスで、感染してから12〜21日程度の潜伏期間を経て水痘を発症します。発熱を含めた軽い全身症状が最初にあるといわれていますが、気付かれないこともしばしばあり、すぐに赤みを帯びた小さな斑状の発疹(小班状疹、丘疹)が顔から体幹に出現します。頭皮の中や口の中にも見られ、その後、腕や脚にも広がっていきます。発疹はかゆみを伴い、水疱になった後、痂皮(かひ、かさぶた)に覆われていきます。数日にわたって発疹が見られますが、小班状疹、丘疹、水疱(すいほう)、痂皮といった異なる種類の発疹が同時に皮膚に見られるのも特徴の一つです。
全ての発疹が痂皮になるまでに数日間かかり、それらが全て消えるまでには20日間ほどかかるといわれています。免疫力が正常の人が水痘にかかっても、重症化することはほとんどありません。まれに発疹の部位に細菌感染を起こし、飛び火のような状態(膿痂疹、のうかしん)になることがあります。これは比較的夏場に多くみられます。その他まれですが、肺炎を起こすこともあります。さらに頻度は少ないですが、脳炎、肝炎、関節炎などを起こすこともあります。しかし、副腎皮質ステロイドホルモンや抗がん剤の治療を受けていたりして免疫力が低下している人では、重症化して死亡することもあります。水痘の罹患(りかん)者の95%は10歳以下といわれていますが、成人の初感染例もたまにみられます。成人が罹患すると小児より重症化する率が高く、肺炎の併発も成人では16〜50%に起こるといわれています。
また、未感染の妊婦が感染した場合、妊娠初期では流産が多く、中期では先天性水痘症候群(CVS、Congenital Varicella Syndrome)の危険が生じます。CVSは水痘に罹患した妊婦の2%程度に出現し、新生児には発達遅滞を伴う種々の神経障害、頭頸部や四肢躯幹の片側性の萎縮性瘢痕(はんこん)などの多発先天奇形がみられます。出生時に症状がなくても生後6カ月ごろから帯状疱疹を生じることもあります。また、妊婦が周産期に水痘に初感染すると、母体からの移行免疫がない新生児が水痘に罹患することになります。これは周産期水痘と呼ばれ、極めて危険な状態であるといわれています。
感染経路、感染力
水痘は、発症した人と短時間でも同じ空間にいると感染する可能性があるといわれるぐらい強い感染力があります。感染は主には空気(飛沫核)感染と飛沫感染で、上気道から水痘帯状疱疹ウイルスを含む飛沫を吸い込むことでおこりますが、水疱への接触感染によることもあります。発疹が出現する2日前から感染する可能性があります。水痘患者の感染力が最も強いのは症状が始まった直後ですが、最後に残った水疱が痂皮になるまで、うつる可能性があります。
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