指揮官の役割にフォーカス

オ リンピックの開催を前に、意外なものが売れている。日本ではお馴染みの防災グッズだ。ロンドン市内では、大量の観光客によって交通網が麻痺し、従業員が家 に帰れなくなることなどを心配して、ここ数カ月、需要が高まっているという。ロンドン市内にある防災グッズ専門店を訪ねた。

2005 年から防災グッズの専門店evaQ8(ロンドン市内)を営んでいるZaid al-Muftiさんは、「これまで事故や災害に対して準備していなかったような企業が、オリンピックに備えて急に防災グッズを買い始めた」と語る。そも そも、イギリスは日本やアメリカに比べ自然災害が少ない。同社が開業した2005年当時は、似たようなビジネスモデルは国内ではほとんどなかったという。  

それでも、ここ数年はテロや、洪水、大雪などへの危機感から、次第に防災グッズが注目を集めるようになってきた。そこに火をつけたのが今回のオリンピックというわけだ。 

政府やオリンピック機関では、各企業に対して鉄道や車道の混雑に備え事業継続の対策を講じることを呼びかけている。こうしたことも、防災意識を高めている背景にはある。 

同社が扱う商品は、非常食や、懐中電灯、携帯ラジオ、アルミブランケット、笛、防災トイレ、救護用品など、日本でもお馴染みのものが多い。が、特徴としてはメガホンや蛍光色の腕章、発光スティックなど災害現場の指揮官向け製品が充実している。 

食品では、ふたを開けると自然に発熱するセルフヒーティングが人気だという。商品の価格帯はさまざまだが、発熱タイプのチリビーンズ(400キロカロリ)が 3.3ポンド(約430円)、6∼8人用のフリーズドライ食が30−40ポンド(3900円―5200円)と、それほど高くはない。 

現在は、8割の取引先が企業や自治体などのビジネスユーザー。アメリカや日本から取り寄せた製品も多く、顧客の要望にあわせてキット化して販売している。

同社は、昨年60万ポンド(約7800万円)を売り上げたが、Zaidさんは、近年中には100万ポンド(約1億3000万円)まで売上を伸ばしたいとしている。