防災の家具固定は「ねじ止め」が基本。でも貸借人にはねじ止めが許されていない!?

もちろん、別途、特約がある場合はこの限りではないものの、ガイドラインから、東京防災で「ネジ止めが基本」と言われても、東京都の賃借人にはネジ止めは、許されていないことがわかります(涙)。

「平成26年防災に関する世論調査」(内閣府)より著者作成
http://survey.gov-online.go.jp/h25/h25-bousai/zh/z09.html
東京都区部では、「先延ばし」23.9% 「面倒」26.1%「家具や壁に傷がつく」22.7%と、「家具や壁に傷がつく」から転倒防止をしないと回答する人が全国平均10.9のほぼ2倍の22.7%になっていて先延ばしと並んでいます。東京都以外でも賃貸借契約が多い都市部ほど、この「家具や壁に傷がつく」が増えています。

上図の内閣府世論調査には、地域の属性別による比較もあります。賃貸家屋が多い地域では、趣味や好みの問題として、家具や壁に傷がつくので転倒防止をしないわけではなく、賃貸家屋で原状回復義務があるので、転倒防止を諦めている実態をあらわしているのではないでしょうか?

実際に防災の講演をしていても、「賃貸なので、どうすればよいのか?」という質問はいつも聞かれます。

防災では勧められ、賃貸借契約では否定されているネジ止め。この問題をもっと直視したほうがいいのではないかと思うのです。

しかし、ダブルスタンダードのようなジレンマを解決したのは、法律ではありませんでした。それは、ネジ止めしなくてよい製品開発の努力でした。

阪神・淡路大震災後には、つっぱり棒タイプがでてきました。その後、天井の強度が弱い場合や長周期地震動にも対応でき、しかも、壁や家具に貼りあとを残さず粘着できるタイプの商品もでてきました。

東京大学目黒公郎教授と翔設計事務所共同開発、家具転倒防止策の効果検証用簡易起震実験装置『てんとう虫』による家具転倒実験の様子。
右のつっぱり棒タイプは、弱い天井では効果を発揮できないが、左の製品、不二ラテックス「不動王」(粘着テープ・長周期地震動対応)では棚は転倒しなかった
http://www.sho-daikibosyuzen.jp/archives/news/3645
出典:「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック26年版」(東京消防庁)よりhttp://www.tfd.metro.tokyo.jp/tfd/hp-bousaika/kaguten/handbook/index.html

 東京防災では、「ネジ止めが難しい場合は、突っ張り棒とストッパー式、突っ張り棒と粘着マットを組み合わせると効果が高くなります」と書かれています。

出典:「東京防災」(東京都)P96より
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2015/08/DATA/20p7o408.pdf

製品の向上や合わせ技などで賃借人は対応してきたわけですが、残念なことに、対応できないケースもあります。

例えば、冷蔵庫にも対応している頼もしい粘着タイプのものでも、こんな注意書きがあります。

とある粘着タイプの家具転倒防止品の取扱説明書。

天板が平坦な冷蔵庫しか取り付けられない・・・でも、こんな冷蔵庫も結構あります。

ねじ止めのための天板がついた冷蔵庫

これは、冷蔵庫の上部に輪があって、ベルト式固定具をかけ、そのベルトをネジ止めしたフックにとりつける=ネジ止めのための天板がついているものです。

ネジ止めを可能にするがために、粘着テープタイプが使えない!

それなら、あわせ技をすればいいのでは?と思われるかもしれません。しかし、冷蔵庫は重量がありますので、どの程度の合わせ技をすればよいのか、実は不明瞭なのです。