企業の事業継続を支えるために

顧客との事前調整を徹底

代替オフィスや、データセンターの運用など、日常的に企業の事業継続を支 えている IT サービス大手のサンガード社に、同社が懸念するオリンピック 期間中におけるリスクと、事業継続に向けた対策を聞いた。

「第一のリスクは、サービスを提供するための人員不足。オリンピックで ロンドン市内の交通が

麻痺して、 突 然、休暇をとって海外に行ってしまっ たり、 会社にいたとしてもテレビを 見ていて仕事が手につかなかったり …」 。  

マーケティングマネジーャ−の Daren Howell 氏から出た言葉は意外 だった。 「テロの発生や、大停電、通 信の途絶は?」と質問すると、 「それ は普段から十分すぎるほど対策をして きたことだ。オリンピックに限らずい つでもトップ3のリスクだから」と笑 いながら応じた。  

数多くの代替オフィスやバックアッ プセンターを持ち、それぞれ無停電電 源装置、 自家発電装置、 予備燃料といっ た基本的対策はもちろん、専用の通信 回線や 14 ものインターネット・サー ビス・プロバイダーとの接続環境を整 えているなど、 ハードへの自信は高い。  

ただ、従業員が移動できなくなるこ とは、確かに大きなリスクだとする。 同社は、顧客企業が必要とする PC や サーバなどをケースに入れて送り届け るサービスも展開している。通常、8 時間から長くても 12 時間以内には届 けられるが、交通渋滞になれば、もっ と時間がかかるかもしれない。そのた め、あらかじめ複数の拠点から分散し て届けられるように改善したとする。  

また、サポート要員を、郊外にある 拠点から、いつでもロンドン市内に確 実に送り込めるよう、交通手段の検討や、路線の変更、さらには、ロンドン市内で住んでいる社員宅にサポート要 員を泊まらせるなど、あらゆる方法を 検討したという。在宅からのリモート 環境なども整えている。  

もう 1 点のリスクは、顧客ニーズ とのミスマッチが生じることだ。同社 のビジネスは、不慮の事故が発生して 顧客企業が自社のオフィスでの事業継 続が困難になった場合に代替オフィス を貸し出すというもの。 「専用タイプ」 と 「シェアド (共用) タイプ」 があるが、 後者の場合も有事の際に使えるのは、 1部屋につき1社だけ。もちろん重複 しないように同じエリア内の企業が、 同じ部屋を契約することがないように しているが、もし市内の広い範囲での 交通渋滞程度で代替オフィスを貸し出 すと、本当に使う必要のある企業に貸 せなくなってしまう可能性も出る。  

Howell 氏は「オリンピックによる 交通渋滞は不慮ではなく、あらかじめ 発生することが分かっているものだか ら、交通渋滞が理由で代替オフィスを 貸すことはできない。ただし、後から 契約の内容が知らなかったということ が無いよう、 1社 1 社、 貸出条件な どについて、改めて合意をいただいて いる」と説明する。もちろん、オリン ピック期間中にテロが発生したり、通 信ラインが途絶するなどの事態が起き た場合は、 不慮の事故として代替オ フィスは使える。昨年の末には、こう したオリンピックに対する自社の方針 をわかりやすく示した「ポリシー・ド キュメント」をすべての顧客企業に配 布。何か質問があれば答えるという形で、 顧客との調整を進めてきたという。