従業員の注意不足やサプライチェーンの途絶を懸念

オリンピックがもたらす事業中断のリスクに対して、イギリス国内では、どのくらいの組織が実際に 準備をしているのだろう。IT サービス会社大手のサンガード社が行ったアンケート調査からは、8割以上の企業が対策の必要性を認識していることがわかった。

サンガードで は、2012 年2月 に、オリンピック期間中における企 業の事業継続対策に関する意識調査 を実施した。  

それによると、オリンピックによ る事業中断の影響を軽減させる準備はどの程度しているか?との問いに 対して、26%の企業が「計画を立て、既にテストも終え準備ができて いる」と回答。38%の企業が「計 画を立てたが、見直しやテストまで は実施していない」とした。また、17%の企業が「まだ具体的な計画 を立てていないが、オリンピック開 催までには準備する」と回答。 「計画を立てる予定はない」との回答は 18%にとどまり、8割以上の企業が、対策の必要性を認識しているこ とが明らかになった(グラフ1) 。

具体的な対策としては、 「フレキシブルタイム制の導入」 (58 %) 、「リモートアクセスなどによる在宅 勤務」(54%)が最も多く、そのほ か「スマートフォンなどを使った柔軟な勤務体制」「休暇の適用」「提供 するサービスに対する顧客との期待 値調整」「サプライチェーンへ注意呼びかけ」「サプライヤーとのコンタクトの強化」などが続く(いずれ も 25%―30%) 。  

アン ケー ト は 従 業 員 250 人 ∼ 1000 人の企業の IT と人事の責任 者 250 人と、国内の企業に従事している 1300 人の従業員に対し2 通りで実施し、集計した。  

アンケート結果を見ると、早くから企業の中には、オリンピックなど のイベントが組織の運営に影響を及ぼすリスクであるという認識が定着 していたことが読み取れる。  

2012 年において、円滑な事業運営の妨げとなる中断要素は何と考えているか? と の 問 いには、 実 に 41%の企業が、オリンピックや ジュビリー※などのイベントを挙げ た(※エリザベス女王の即位 60 周 年式典) (グラフ2) 。

オリンピック期間中に、組織また は企業は、あなたの事業部が通常通 り業務ができると考えているか?と の問いには、45%の担当者が「いいえ、ある程度、事業が妨げられる と考えている」と回答(グラフ3) 。  

さらに、サプライヤーがオリンピック期間中も注文やサービスを十分に満たしてくれるとは限らない が、どう考えているか?との問いには、 「とても心配している」が7%、 「かなり心配している」 24%、 問 が 「 題が発生する可能性があると考えて いる」が 43%で、多くが不安を抱 えている状況が明らかになった(グ ラフ4) 。  実際に心配している事業中断要因 はどのようなものか?  一番の懸念は、 「イベントに起因 したサプライチェーンの崩壊と従業 員がオリンピックゲームを見てい ること(注意不足) (62%) 」 。次いで「 ネ ッ ト ワ ー ク 障 害、 セ キ ュ リ ティ侵害など」 (57%) 交通渋滞、 「 電車遅延、ホテル部屋の不足など」 (50%)となっている(グラフ5) 。

サンガード社広報リーダーの Piper-Anna Shields 氏 は、 今 回 「 調査したのは比較的大きな企業で、 250 人以下の企業はイギリスでも たぶんそれほどオリンピック対策に 取り組んでいないと思う」とコメン ト。ただし「金融庁の監督下にある 銀行や証券会社など金融機関については、オリンピックに限らず、ほぼ 完全に事業中断への対策ができてい ると言っていい」とした。  

ま た、Shields 氏 は、 「今 回は オリンピックについての調査を行った が、それは事業を中断させる1つの 要素でしかなくて、今や日本の津波 やタイの洪水のように、世界で発生 する事象によっても事業中断の可能 性があるということを企業のリーダーの方はきちんと認識する必要がある」と話していた。