フィリピン地震では首都マニラでも揺れがあった

トーマツは25日、海外リスクに関する記者勉強会を東京都千代田区の同社で開催。パートナーの中澤可武(かむ)氏がフィリピンでの地震から考える日系企業の海外拠点でのBCP(事業継続計画)のあり方などについて解説した。

4月22日にフィリピン・ルソン島を震源とするマグニチュード6.1の地震が発生。同島中部のパンパンガ州では少なくとも8人が死亡。首都マニラでも揺れがあり、オフィス街では避難する人も発生したという。

中澤氏は気候変動の影響もあり世界的に災害が頻発する中、「安否確認や避難計画などBCPが日系企業の海外拠点ではあまり進んでいない」と説明。日本における企業BCPの取り組みは比較的進んでいるものの、水平展開できず現地任せになっている、海外でBCPに精通した人物が採用できないといった課題があるという。

備えもなく災害に遭うと従業員が出勤できず、生産や販売ができない他に生産設備の破損、さらには自社のみでなくサプライヤーの被災による影響を受ける可能性もある。中澤氏は各拠点での安否確認や避難計画の仕組み作り、訓練の実施の他、生産設備などの保全の対策や保険の準備、サプライチェーン脆弱性とサプライヤーBCPの評価や、万が一の際の代替部材・サービス確保に努めるべきだとした。

さらに中澤氏は「日本の本社が責任を持って、海外拠点のBCPに積極的に取り組むよう舵を切る必要がある」と説明。日本の本社で状況を把握し、対策についても現地拠点と協力しながら進めていくことが重要だとした。

同じく東南アジアのインドネシアでは首都をジャカルタからジャワ島外に移転することを決定。ジャカルタ首都圏に約3000万人が住み過密となり、交通渋滞による損失が年間100兆ルピア(約7700億円)にものぼることなどが要因。中澤氏はジャカルタからの人口流出による売り上げ低下や、サプライヤーの移転によるサプライチェーンの再構築の必要性といった企業リスクを紹介。自社拠点を移転する、もしくはしない場合の影響も含めた、今後のリスク分析が必要だとした。

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介