2019/07/19
日本企業が失敗する新チャイナ・リスク

■ 赴任と同時に必ず経験する中国式カラオケバー
2005年当時、上海にも多くの日本人御用達のアフターファイブのお店が存在しました。人気マンガ「島耕作」シリーズにも登場し、小姐(シャオジエ)たちとの夜の交流が多く描写されていましたので、ご存じの方も多いかと思います。
当時、上海市内の日本料理店では、年齢が大きく離れた若い女性と夕食を共にする日本人男性たちが多く見かけられ、その若い女性達が自分の勤務するカラオケバーにそのまま一緒に出勤するということがよく行われていました。これは、もともと香港やマカオ、そして東莞市で日常行われていたシステムを踏襲したものと考えてもいいでしょう。
実際、日本からの駐在員や日本からの短期出張者にとっても、同様にアフターファイブを楽しむコースとして定着しており、中国に来られた男性たちは誰もが一度はお決まりの事として経験されたことでしょう。
しかし、それが単なるアフターファイブのお遊びとして終わるのではなく、情事事件として大きく逸脱してしまい、日本へ強制送還された人や、女性を妊娠させてしまったことによる大きな経済的損失、所属企業への大きな負担を強いてしまった事件も存在するのです。下記は一事例です。
ある大手企業の総経理(現地法人の社長)Aさんは、当時50歳。妻子を日本へ置いての単身赴任。
業績もまずまずの現地法人の社長(総経理)として赴任して来てすぐに、お決まりのコースとしてあるカラオケバーに通うようになりました。そしてまもなくAさんのことが好みだという日本語がたどたどしい若い小姐と仲良くなりました。まだ上海に来て数カ月だという彼女、大都市にも慣れず、カラオケバーの仕事にも不慣れな中でAさんみたいな人に会えて幸せだと言います。お世辞にもイケメンとはいえないAさん、既婚ではあるが今までそんなにモテたことがない。しかも自分の娘ほどの若い女性からの甘い言葉に舞い上がってしまいました。当然、毎日通えば親密な関係にもなろうもの、ある晩一緒に過ごしてしまったのです。
そうしたところ、ある日突然彼女が妊娠したことを告げてきたのです。Aさんは、そんなことになってしまっては大変なことになると、彼女との距離を置き始めました。しかし、それで納得のいく彼女ではありません、ある日突然「妊娠証明書」なるものを持ってAさんの会社に押しかけてきたのです。それから、Aさんの企業は上へ下への大騒ぎとなってしまいました。
当然、日本本社からも担当役員が来海し事実の確認、弁護士も入れて解決しようと試みましたが、医者が書いた「妊娠証明書」もある、カラオケバーにはAさんと当該の小姐が仲良かったことを証明する人がたくさんいる中では、裁判で争ったところで勝ち目はないと判断されました。ましてや企業としてのコンプライアンス問題もあります。
示談ということになり、多額の保証金を払うと同時に、当該の小姐との関係はなかったことにされ、Aさんは強制的に日本へ帰国、新たな代わりの総経理が日本より赴任してきました。
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