2019/07/12
危機管理の神髄
頭を引っ込めろ!隠れろ!
核時代の夜が明けると、連邦政府は、この新しく実在する脅威に対する備えを先導した。1950年国家安全保障資源委員会はブルーブックを発行した。その後40年間の民間防衛を指導する162ページのバイブルである。
民間防衛には、教育プログラム、避難計画、そして緊急事態警報システムなど、いくつかの分野がある。また、多くの市庁舎の地階に設置されている緊急初動対応本部につながる政府の業務継続の計画も含まれる。
1950年代から60年代の初めの人々は、民間防衛の教育プログラムを覚えている。バートという名の亀がいて、非常に用心深い。彼が危機に脅かされると、いつも負傷することもなく、何をすべきか承知している。
「頭を引っ込めろ!隠れろ!」子供のときにテレビを見過ぎのわれわれは、緊急放送システムのこのテストのセリフを暗唱することができる。
しかし、連邦政府はこの仕事に熱心ではなかった。独りよがりの自己満足が設立当初から何十年もの間、民間防衛の全ての局面にはびこっていた。この外部機関は10以上の名前に変わり、ついには1979年に連邦緊急事態管理庁(FEMA)となった。さらに、もう一回の組織再編成を経て、最終的に2003年に本土安全保障省の中に入った。本省とこの外部機関との間で押し付け合ったプログラムの予算要求に対して、連邦議会は決して十分に認めることはなかった。
それ以降の数年間、情報活動コミュニティやホワイトハウス、国民全体でも懸念が高まっているにもかかわらず、核脅威に対する計画は分断され、行き当たりばったりで非効率である。
深淵を覗き込む
ヒロシマの47年後ソビエト連邦が崩壊し、冷戦が終わった。しかしわれわれは、今日でも冷戦の遺産とともに生きている。大統領にどこへでも随伴する軍事補佐官は、「核のフットボール」と呼ばれる核兵器の発射コードが入ったブリーフケースを携行している。
現在、冷戦時代と比べると、世界は非常に違って見える。9カ国が核兵器を保有していると知られている。アメリカ合衆国、ロシア、英国、フランス、中国、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮である。これらの国々で、まとめて1万発の核兵器を保有している。それらのほとんどは、ポラリス(ミサイル)よりも何倍も破壊力がある。
米国の保有する中で最も多い核兵器はW76として知られているが、10万キロトンの爆破力を持ち、または、TNT換算10万トン、ヒロシマとナガサキに投下された爆弾の5倍である。
米国とロシアは核兵器の非常警戒態勢を敷いており、衛星で敵ミサイルが探知され、それが到達するまでの間の短い時間枠(30分)の中で発射することができる。
われわれは、この任務を「攻撃下の発射」と呼ぶ。それには、ほとんど意思決定の時間が残されていない。大統領には、ミサイル警告は信用できるか、報復命令を下すかを決断する時間は5分もない。
同時に、高精度攻撃やサイバーアタックにより、相手方の「首切り」のリスクも増している。これは相当な不安定な状況を作り、偽警告のリスクを高める。
確かでない破滅
これらのリスクにもかかわらず、本土安全保障省の専門家は冷戦時の兵器をあまり心配せずに、爆破によっても生き残ることができ、おそらく管理可能と思われる低い威力の爆弾をもっと心配している。
マンハッタン・ミッドタウンが10キロトン爆弾(北朝鮮が現在試験をしている核兵器とほぼ同じサイズ)で攻撃されると、ミッドタウンの被汚染「ホットゾーン」はゴーストタウンになってしまうだろう。
1マイルぐらい離れて14丁目町の南と53丁目の北では、おおむね被害からは安全である。
科学者は、もし攻撃された場合でも、今実行すれば、数えられない数の命を助けることができるいくつかの簡単な方法を見つけた。長年の核兵器保有国が持っている高性能のメガトン爆弾でも、もっと小型のポラリスのような初心者用の核兵器にも通用する。
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