2016/05/16
防災・危機管理ニュース
新入生代表女子学生の夢は「国際難民問題の解決」

「君たちはどこの学部の学生かな?」と話しかけると、「危機管理学部です!」と学生たちの元気な声が返ってきた。今年4月に開設されたばかりの日本大学危機管理学部を取材に訪れた時の出来事だ。記者は、大げさではなく「日本の危機管理がまた一段、新しいステージに上がったのかもしれない」と明るい衝撃を覚えた。「ユニークで、志の高い優秀な学生が集まった」と同学部創設メンバーの一人である福田充教授は胸を張る。未来の危機管理を担う人材に求められる資質とはどのようなものか。同学部の教育方針を取材した。

「警察官や消防士などファーストレスポンダーを目指す学生もいれば、東日本大震災や常総市の水害で被災し、災害対応を学ぶために入学した学生もいる。入学式で新入生を代表した女子学生は、「夢は国際機関で難民問題を解決すること。そのためにグローバルセキュリティを学びたい」と語っていた。これまでに出会ったことのないような意識と志の高い学生が入学してくれたというのが実感だ」と話すのは、日本大学危機管理学部次長の福田充教授。
日本初の危機管理学を総合的に学ぶことができる同学部の1期生およそ300人のうち、女子は約3分の1。福田氏は「現在は災害対応や避難所運営、さらには防犯においても女性の視点が強く求められている。女子学生が多いのは非常に心強い」と続ける。
福田氏は大学院生時代、東京大学社会情報研究所(現・大学院情報学環)でメディアや報道の効果研究をしていたが、博士課程進学の時に阪神・淡路大震災が発生した。生まれ故郷である兵庫県西宮市も大きく被災し、被災地の調査に入るなか、2ヶ月後には地下鉄サリン事件が発生。日本の危機管理体制に対して疑問を抱き、この分野を研究する決意を固めたという。しかし当時、東京大学では災害を研究する部門はあってもテロ対策や危機管理について学ぶ場所はなかった。その後、危機管理や安全保障を自由に研究できる日本大学から声がかかったという。
「当時、危機管理について自由に研究できるのは私学しかないと思った。研究する場所を与えてくれ、今回は危機管理学部の創設という非常に大きな役割を与えてくれた日本大学にとても感謝している」と、福田氏は当時を振り返る。
しかし、そもそもなぜ日大は「危機管理学部」を創設したのだろうか?
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方