「リスク対策.com」VOL.45 2014年9月掲載記事

NY市と民間企業の連携

ニューヨーク州はタイムラインの発動によってハリケーンの被害を最小限に食い止めたと言われる。一方で、タイムラインの遂行には民間企業との早期の連携も欠かせないことも浮き彫りなった。ハリケーン・サンディから日本はどのような教訓を得ることができるのか。

被災後に政府・学会合同調査団の一員として現地を訪れ、BCPの観点から研究をしてきた名古屋工業大学大学院社会工学専攻の渡辺研司教授に話を聞いた。

編集部注:「リスク対策.com」本誌2014年9月25日号(Vol.45)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年5月16日)

教訓その1
時系列に基づき対策を実施できるように計画をつくるべき

ハリケーン・サンディでは、ニューヨーク市長が上陸3日前に避難すべき地域を発表し、沿岸部の病院に入院患者を退避させるよう呼びかけ、地下鉄の運行停止も予告。地下鉄ではあらかじめ電源を地上に運び出すなどの対策を行い、被災を最小限に抑えた。またコンビナートでも事前に製油を止めるなど、タイムラインにのっとった対策が注目を集めた。

こうした取り組みを早くから企業として展開しているのが、世界最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマートだ。独自に複数の気象予報士と契約し、さまざまなハリケーンの

進路を予想。台風の進路上にある全てのウォルマート店舗に対して、仮店舗用の大型トレーラーを派遣した。水浸しになった店舗に変わって物資を消費者に販売できるようにし、営業を継続したという。

2005年に米国南東部に甚大な被害をもたらしたハリケーン・カトリーナの時も、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)よりも早く被災地に水を届けたケースもあったとする。このような企業と自治体が連携すれば、被災地にもっと効率よく救援物資を配給することができるはずである。 

「これからは災害対応も、『対応ができた』というだけではなく、いかに効率よくできるかという、対応のクオリティも問われるようになる」と渡辺氏は話す。