2019/04/19
講演録

リスク対策.comは9日、東京都千代田区の明治薬科大学剛堂会館ビルで第4回危機管理塾を開催。ローソンでコンプライアンス・リスク統括室長を務める吉田浩一氏が同社のリスク管理について講演した。
2005年にBCP(事業継続計画)を策定。2014年から毎年改定を行っている。2003年に56万人の個人流出のほか、2010年には子会社の横領など、これまでの不祥事を教訓としており、「ピンチはチャンス。不祥事の際はその後に同様のケースがあった際の対応を決める機会になる」と吉田氏は述べた。
コンプライアンス・リスク会議は月1回開催。品質や衛生、防犯や情報セキュリティなど小委員会を5つ設置。リスクマネジメント体制を整備している。
本部のみでなく8つのエリアにCRO(コンプライアンス・アンド・リスクマネジメント・オフィサー)を配置。災害時は24時間体制で集まるのが原則となっており、エリアCROはエリアの災害対策の責任者として活動する。災害レベル1~3に分類されており、それぞれ支店、エリアオフィス、本部の対応も決められている。震度6弱以上の地震はレベル3で支店、エリアオフィスと本部にも災害対策本部が置かれる。台風接近や大雪が見込まれる場合のレベル1は支店で個別対応。実際に被害が出たり台風が通過・上陸したりした場合はレベル2として、支店とエリアオフィスに災害対策本部が置かれる。
「コンビニは災害時を支えるライフラインでもある。1月17日、3月11日、9月1日に年3回の訓練を設定している。発電など実動訓練も最低1回は実施しているし、安否確認をアルバイトも含めてやるように指導している」と吉田氏は説明。BCPマニュアルは紙と電子版のほか、インフラ破壊などに備え最悪パソコンでも使えるDVD版も作成している。47都道府県19区市と災害物資協定を締結しているほか、43都道府県と10政令都市と帰宅困難者協定も締結している。
危機管理として近年はアルバイトによるSNSへの不適切な投稿の防止も注力。バックヤードに置いてあるコンピューターで3分程度の注意喚起の動画も流すなど、予防を心がけている。同社にはアルバイト15万人用の本部へのホットライン設置のほか、オーナー福祉会もあり、常に店舗からしっかり情報を吸い上げる。
吉田氏は「『不祥事は起こる』と常に考えてほしい。組織制度手続きの体制と各自のプロセス作り(態勢)が大事。当社では異常があれば全てコンプライアンス・リスク統括室に入ってくる」と説明し、不測の事態に備えた体制作りが重要であることを述べた。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方