3 被害想定を示した図表 

一方、被害想定は、地域の特性を詳細分析するため、建物被害については都内250m×250mメッシュに区分し(東京都全体で約2万8000メッシュ)ごとに、その地域のデータ(木造建物と非木造建物の構別や築年次別などのデータ)を被害推計式に投入しています。このため、算出された被害想定の地域別状況は、どの地域で甚大な被害が発生するかについては、ほぼ正確に表しております。 

私が講演などで利用している被害想定の図表は次のとおりで、地震のタイプ別に一目で分かるように記載されています。

4 国の首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告 

平成25年12月19日、中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループは、「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」を公表しました。その概要は、別図のとおりで、防災対策の対象とする地震として、次の2つの地震をあげ、被害想定を次のように想定しています。

(1)都区部直下のM7クラスの地震 【都心南部直下地震(M7.3)】 
(30年間に70%の確率で発生)

(2)相模トラフ沿いのM8クラスの地震【大正関東地震タイプの地震(M8.2)】
(当面発生する可能性は低い)

■首都直下地震対策検討ワーキンググループ(内閣府防災情報ページ)
http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg/

これをみると、市街地火災の多発と延焼の死者が、建物倒壊による死者の約1.5倍となっており、にわかに信じることができませんでした。 このため、火災による被害の想定手法をみると、これまでの地震や大火事例が少なく、「延焼拡大時の逃げまどい」は関東大震災と函館大火の2事例から算定されており、当時と現在との建物構造、周辺道路、被害情報の伝達などが異なっており、実態からかけ離れた数値ではないかと考えられます。

5 「30年間に70%の確率」の意味 

首都直下地震対策の発生(南関東で発生する)確率は、30年間に70%の確率と言われています。これは、毎年1月1日付で、地震調査研究推進本部事務局(事務局:文部科学省研究開発局地震・防災研究課)が発表しているもので、近代的な地震観測が開始された1885年以降の地震で、相模トラフ沿いの地震でM7程度の地震が120年間に5回発生しており、その平均発生頻度は23.8年と推定され、それを今後30年以内の発生する確率にすると70%となるものです。 

また、大正型関東地震や元禄型関東地震の今後30年以内に発生する確率は、「ほぼ0%~2%」「ほぼ0%」ととなっています。


■海溝型地震の長期評価の概要(地震調査研究推進本部)
http://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/kaikou.htm

これらの確率は、地震が周期的に起きている実態を、過去の限られた発生時期と件数から、今後の発生確率を推測しているもので、私は、首都直下地震は「確率ではなく、いつ来てもおかしくない」と考え、必要な対策を講じていくことが重要であると考えています。

今回のポイント:被害想定の数値を信じるな、必ず来る首都直下地震へ備えよう

次回は、「企業よ、安否確認や備蓄をするな」

(了)